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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第111回】   高浜共立運輸株式会社(愛知県高浜市)

ベンチャー企業と提携し配送車両台数削減などを提案

 働き方改革の推進にはコストの増加が伴う。その原資をどのように確保するかが経営上の大きな課題である。取引先との交渉で単価を上げることも必要だが、同時に、作業の効率化などによって生産性を向上しなければならない。これはあらゆる産業に共通しているが、とりわけ物流業界においては働き方改革が急務で、労働力を確保できなければ事業者にとっては存続の危機になりかねない。物流サービスの安定的な供給のためには生産性向上が必要なのである。このような認識から高浜共立運輸(本社・愛知県高浜市、神谷弘恵社長)では、国立大学系のベンチャー企業と提携して効率化に取り組んでいる。AIを駆使して配送を効率化すると同時に労働時間の短縮を図ろうという試みである。第1段としては、「配送コースを再編することにより配送車両1台(2t車)を削減し、さらに、配送作業を効率化して労働時間を短縮する案などを提案した」(神谷昌彦会長)。

 高浜共立運輸は1951年の創業で、1972年に会社設立。現在は本社、本社営業所ならびに「ひよこ引越センター」、長久手営業所(愛知県長久手市)、豊橋事務所(同豊橋市)がある。事業内容は、ワンストップサービスでは大物家電や家具類の保管・組立・搬入・設置、PCサーバーのキッティング・ソフトウェアの導入、IT機器の入替・移転・移設、旧製品のデータ消去や梱包材などの産廃処理などを行っている。また、クロスドックセンターの運営と配送業務を行っている他、運輸事業では一般貨物運送、事務機器販売会社やネット通販会社の大物商品などの2マンデリバリー、定温輸送、引越サービス、軽貨物輸送などを行っている。このような事業展開の中で、地元のある食品製造販売会社との取引がある。この荷主の社長と神谷会長は旧知の中で、そのようなことから物流業務の一部を受託するようになり、今日に至っている。

 この荷主は豊橋の工場から直接小売店に納品する配送コースと、豊橋の工場から名古屋の物流センターに横持ちしてセンターから小売店に納品する配送コースがある。そもそもは物流センターの運営も店舗配送も荷主が社内で行っていた。そのうち工場から物流センターへの横持ちと、物流センターからの店舗配送の一部を高浜共立運輸が受託するようになり、業務を遂行してきた。したがって、現在でも物流センターの運営、豊橋の工場から直接配送の総てと名古屋の物流センターからの店舗配送の一部は荷主が自家用トラックで行っている。これには理由があって、「賞味期限が短い商品のため、A店舗で売れ残りそうなら、予想より売れて欠品になりそうなB店舗に商品を移す、といったことも行うから」(神谷会長)だ。季節波動のある商品で、さらに天候にも左右され、その他にも地域的なイベントがあるとその地域の小売店の販売数量が増えるなど様ざまな条件があるという。

 このようなことから高浜共立運輸が受託しているのは豊橋の工場から名古屋の物流センターへの横持ちと、物流センターからの店舗配送の一部である。このうち工場、センター間の横持ちは4t車1台で夏場は1日に2回、冬場は4回で、その他にも繁忙期には3台ぐらいでやる場合もある。名古屋物流センターからの配送は、市内のデパートや量販店などの店舗への配送で、同社が担当している配送先は93店舗。配送コースは11コースで配送車両は2t車11台である。また、「配送先では陳列などの付帯作業を行う店もあり、労働時間を短縮するには付帯作業の見直しも必要である」(神谷会長)。工場からの横持ちの台数と、配送車両の台数を単純に比較すれば、配送車両の積載率が低いことは明瞭だ。つまり、配送コースを再編して効率化を図る余地があることが分かる。このようなことから高浜共立運輸では、効率化をして生産性を向上する必要性を前まえから認識していた。

 そこで神谷会長は名古屋市内の物流AIベンチャー企業を訪ね、配送コース再編成などのシミュレーションを依頼した。すると配送先93店舗に11コース、2t車11台で配送しているが、10コースに再編成して10台で配送できるという結果が出た。また、ドライバーの拘束時間は6時間~8時間に収まるという試算であった。この配送コースは毎日の条件変化で組み換える。また、配達の途中で事故などによる道路混雑など条件が変われば、配送先の順番を適宜、変更できる。ドライバーはスマホで、その日の配送先や配送順番、走行ルートなどが分かるというもの。また、1件の配達が終わったらスマホで次の配送先を改めて確認する。もし、突発的な道路渋滞などがあった場合には、当初の配送順番から最適な配送順番に変更になり、走行ルートなども含めて確認できるようになっている。高浜共立運輸ではさらに陳列作業の時間短縮など様ざまな効率化を検討している。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(写真提供:高浜共立運輸)