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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第151回】    総武物流株式会社(千葉県野田市)

「見える化」でトラック滞留時間(受付~出発)を大幅短縮

 2024年4月まで1年を切った。いうまでもなくドライバーの労働時間短縮が大きな課題である。ドライバー不足によって荷物が運べなくなる事態の到来を回避しなければならない。そのためには荷主と事業者、その他の関係者が協力してドライバーの労働時間短縮や物流業務の効率化など様々な取り組みが必要だ。キッコーマンのグループ会社である総武物流(本社・千葉県野田市、戸邉寛社長)では、自車両はもちろんだが、元請事業者として協力会社のドライバーの労働時間短縮にも協力しなければならない。同社の本社がある野田市は、キッコーマンの本社所在地(東京本社もある)で、一大生産拠点になっている。近隣には倉庫なども多く点在しており、総武物流はこれらの出荷拠点の庫内作業などを行っているが、野田から出発する車両、野田着の車両ともそれぞれ約150台/日ある。これら車両の受付から出発までの滞留時間の短縮が大きな課題だった。

 総武物流の設立は1924年で来年は設立100年を迎える。設立時は野田運輸だった。詳細は省くが様々な経緯を経て1994年に現在の総武物流になった。現在は北海道から九州まで13のDCや倉庫、受注センターなどを持つ。売上高は約110億円(2023年3月期)で、従業員数は180人。保有車両数は自車両が大型車中心に10台と関連会社の車両が80台で、その他に直接契約の協力会社が全国に67社ある。取引先はキッコーマンのグループ会社や関連会社、その他の大手食品、飲料メーカーなどである。事業内容は一般貨物自動車運送事業の他に、第一種ならびに第二種貨物利用運送、貨物軽自動車運送事業、倉庫業などである。輸送ネットワークとしては幹線輸送とエリア内の共同配送があり、物流サービス、倉庫サービスなどを行っている。運輸部の中にはアジャストセンターがあり、協力会社の車両も含めて効率的な車両と荷物のマッチングを行っている。

 同社では2013年12月26日に200t分の荷物が欠車によって運べないという苦い経験をした。そこで翌年4月からの消費税率8%への引き上げを前に、2014年の正月からは10項目の対策を立てて対応した。さらに2015年からは様々な諸施策を推進してきた。その一つがTCからDCへの転換である。それに併行して輸送距離が500㎞以上では鉄道輸送や海上輸送にするモーダルシフトも進めた。その他にもトラックの長距離輸送では中継輸送方式も採り入れている。だが、大きな課題は受付から出発までのトラックの滞留時間の短縮だった。同社の本社がある野田市には荷主の倉庫や出荷の拠点がいくつかある。ドライバーは、事務所で受付をして伝票を受け取る→野田市内の複数の倉庫に移動して商品を積む→最後の商品を積んだら幹線輸送(エリア配送)に出発という動きになる。だが、この滞留時間が2019年4月~7月の平均では3時間11分もあった。

 現場を分析した結果、①庫内作業者に正確な情報を迅速に伝える手段がなく、変化する出荷作業の優先順位などが現場に伝わらない。②ドライバーの移動状況や倉庫側の準備状況が把握できず、ドライバーの荷待ち時間が発生して長時間帯流になっていることが分かった。改善策として「見える化」に取り組むことにしたのである。開発・導入したシステムは管理者がWeb画面で出荷優先順位を指定し、各倉庫に設置したモニターで作業者が確認できるようにすることで、優先順に出荷準備ができるようにするというもの。また、タブレットの利用によって、作業者全員が手元で内容を確認して操作し、優先順位に沿ってピッキングや検品などが行える。同時にペーパレス化も推進した。一方、ドライバーはスマホ専用アプリによって位置情報と当該倉庫の状況を提供するようにした。これによってドライバーが現在どこにいるか、その倉庫の作業状況はどうかなどが把握できる。

 これらと併行して庫内各所に「見える化」用のモニターを設置、フォークリフトの作業動線の見直し、ドライバーのノー検品(庫内作業者が検品)などを実施した。これらの取り組みで「庫内作業員の労働時間も大幅に削減でき、ペーパレス化で印刷用紙を年間50万枚削減し、インクカートリッジなどの消耗品の消費量も削減できて年間130万円のコスト削減を実現した」(戸邉社長)。トラックの平均滞留時間も3時間11分から、2020年度2時間24分、21年度2時間09分、22年度2時間07分と3年間で64分の短縮となった。今後の展開としては「野田市内にある複数の出荷倉庫を1カ所に集約して倉庫間の移動ロスを減らし滞留時間の削減を図る。トラック誘導システムをバージョンアップしてドライバーがスマートフォンから倉庫入場時間を予約できるシステムを提供することでバース管理の強化と倉庫作業の効率化を図る」(同)、といったことを計画している。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(写真1は総武物流HPより、写真2、3は筆者撮影)