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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第153回】    斎藤運輸倉庫株式会社(石川県能美市)

近場は残業50時間だが、長距離が今後の課題

 「2024年問題」への対応も、地場配送なら比較的クリアできるが、長距離の労働時間短縮は容易ではない。多くの事業者が抱える課題である。北陸から関東への建材などの輸送では、すでに今から17年も前から関東の提携事業者との協業によって大幅な労働時間の短縮や輸送の効率化を図ってきた斎藤運輸倉庫(石川県能美市、斎藤晶義社長)も例外ではない。同社の設立は1965年で、当初は路線事業者の貨物取り扱いから始まった。翌66年には運送事業免許(当時)を取得して路線の集配業務を受託するようになった。だが路線事業者はネットワークを拡充し、集配業務を自社で行うようになってきた。そのような中で、小松工業団地に工場進出したあるパーティション・メーカーの仕事を受託するようになった。最初は北陸3県を主とした近場の輸送から始まったのだが、1989年~1990年ごろに、関東方面への長距離輸送の依頼があった。

 当時は北陸から関西への輸送をしている地元事業者は多かったが、関東向けの事業者は比較的少なかった。そこでパーティションの荷主をベースカーゴに、住宅用建材や建設機械部品などの荷主も含めて、関東向けの長距離輸送の比率を徐々に拡大する方向を打ち出したのである。だが、小ロット・中ロット貨物を積合せて積載率を高め、また確実な帰荷の確保で実車率を向上し、北陸と関東を結ぶ独自のサービスシステムの構築を目指す、という基本方針を明確に打ち出したのは2000年だった。その時「全従業員を前に会社の進む道はこの方向だと基本方針を示して、付いてくるか否かを従業員1人ひとりに迫った」(斎藤社長)。今後の会社の基本方針を全社に浸透するためだった。さらに同社は倉庫業にも進出し、危険物の保管などもするようになった。関東から入ってくる染料やインクなどの化成品類を危険物倉庫で一時的に預かって、地場の染色工場などに納品する仕事である。

 地元から関東方面にはパーティションなどを運び、帰荷として化成品を積んで帰ることで実車率を高めるようにした。一方、建材などの関東への輸送では群馬県渋川市と、伊勢崎市の事業者と3社間で業務提携し、3社がお互いに効率性を向上するための積合せシステムを構築することにした。地元発の建材の関東方面への輸送の最大の問題点は、その都度、納品先が違うことである。輸送先が関東1都7県と広域にわたっている。千葉からの化成品の帰荷が確保できていても空車移動などで車両の効率的なオペレーションができない。そこで群馬県の提携事業者まで運んで、関東の納品先への輸送を委託。提携先から北陸に運んで北陸3県に配送する荷物を帰荷として積んで帰る、というシステムを導入した。帰荷の状況に応じて空パレットも積んで帰るという仕組みだ。2006年7月ごろから提携に向けた準備を始め、同年10月に正式に業務提携をした。この群馬は2日運行だ。

 現在では神奈川県の相模原市にもパートナー会社があり、荷物を卸してから千葉に化成品を引取りに行くか、あるいは群馬の提携事業者に回って帰荷を積んで帰るため「ギリギリ2日運行というところ」(斎藤社長)である。このように長時間労働になっているので、「荷主とは積込み時間の短縮や高速料金の全額支払いなども交渉している」(同)。さらに上りか下りのどちらかの荷物しか決まっていないフリーの車両がある。フリーの車両では、帰荷の荷待ち時間などで長時間拘束になっているので労働時間短縮が大きな課題だ。保有車両数は16台(大型車7台、4㌧車9台)でドライバー13人、その他に傭車がある。そのうち北陸3県の配送では車両を1日2回転、あるいは3回転させている。もちろん「遠いところは早く出発させたりしているが、1カ月の残業時間が50時間程度」(同)に収まっている。問題は運賃だが、「値下げで動いている事業者もいるため難航している」(同)。

 そのような厳しい状況の中でも収入を保証しなければならない。同社では「歩合給にはしていない。荷主によって運賃の単価が違うから」(斎藤社長)という。「長距離は1運行いくらで、そこに資格手当を付けている。近場は基本給+残業代に資格手当を付ける」(同)。ドライバーがオイル交換やタイヤ交換などを行うが、それらにも手当を付ける。また、「給料よりも賞与で還元するような方向で考えている」(同)という。同社でユニークなのは事務所を入った正面カウンターに大きなQRコードがあることだ。タイムカード代わりに出退勤時にスマホでQRコードを読むのだという。QRコードは事務所と倉庫にある。QRコードによる出退勤記録にしたのは昨年秋からだが、QRコードなら残業時間の累計なども分かるという。QRコードの出退勤管理をみたのは始めてだが、今後は出退勤だけではなく労働時間管理などでQRコードの幅広い活用を考えていくと面白いかもしれない。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>