運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事
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【第154回】 株式会社新宮運送(兵庫県たつの市)
「世直しREサイクル」やS-DEC運動などユニークな取り組み
最初は揖保乃糸や木炭輸送からスタートし、現在ではタンクローリーによる危険物輸送、住宅用断熱材(発泡スチロール)輸送、衛生紙など紙製品輸送、鉄鋼輸送、農産物輸送(グループの常磐運輸)、産業廃遺物収集運搬事業、環境関連事業などを展開している新宮運送(本社・兵庫県たつの市、木南一志社長)。同社の創業は1962年で、新宮運送店として事業許可を取得し保有台数3台でスタート。地元の名産品である揖保乃糸や木炭などの輸送から始まった。順調に業容が拡大し1965年には保有車両数も35台にまで増えた。そして1968年には有限会社新宮運送として法人化。同社の大きな転換点ともいえるのが、タンクローリーを導入して危険物輸送に参入した1969年である。「危険物取扱者の資格がいらないナフタリンの引き取り輸送などから入り、いわば助走期間があったのですが、ドライバーに危険物取扱者の資格を取得させるのは大変でした」(木南社長)という。
その後、建築用断熱材(発泡スチロール)の輸送も始め、1983年には現社名に商号変更している。さらにトイレットペーパーなど衛生紙の輸送も開始。1993年からはS-DEC運動を開始し、1999年からは「世直しREサイクル」も始めた。2006年には東豊運輸を買収して合併。現在は化成品のタンクローリー輸送、発泡スチロール(建築用断熱材)輸送、トイレットペーパーなど衛生紙輸送が新宮運送の3本柱になっており、さらにトレーラによる鉄鋼輸送も行っている。また、野菜など農産物輸送をしている関連会社の常磐運輸は1995年に設立した。「夜間の仕事なので別会社にした」(木南社長)という。本社の他に姫路営業所、たつの物流センター、今年3月28日に竣工したたつの第2物流センター、関連会社としては常磐運輸がある。従業員数は93人で、そのうちドライバーは85人で保有車両台数は86台。常磐運輸は従業員38人で32台である。
新宮運送が1999年から始めた環境関連事業の一つが「世直しREサイクル」システムである。同社の独自性は、まずトイレットペーパーと段ボールの箱を有料で契約先の法人などに販売する。契約先では、その段ボールの箱にゴミになった紙を入れておき、新宮運送に連絡するとドライバーが新しい段ボール箱とトイレットペーパーをもって行き、ゴミの紙が入った段ボール箱を回収。リサイクル工場に持ち込むという仕組みである。たとえば「Aコース」の場合なら、トイレットペーパー60ロールと段ボール箱(世直しBOX)10個を合わせて1万円となっている。契約先の法人などでは、トイレットペーパーは普通にトイレで使う。また、いらないゴミ紙はシュレッダーにかけずに段ボール箱に入れておく。段ボール箱に紙がたまったら新宮運送に連絡する、という仕組みだ。契約先ではゴミの紙をシュレッダーにかけないで出すが、機密保持については誓約書を交わしている。
新宮運送が1993年から始めた安全への取り組みがS-DEC(Safety Pro Drivers Endless Challenge Systems)である。これはプロドライバーとしてエンドレスに安全にチャレンジする仕組みだ。「それまでは売上至上主義で数字を追い求めていました。しかし事故が無くならない。事故を無くすにはどうすれば良いかを考えた結果、ドライバー自身が無事故で幸せだと思えるようにすること」(木南社長)、という考えに行きついた。S-DECは集団で全員が一緒に無事故無違反を目指すものではない。ドライバー一人ひとりが取り組む無事故無違反運動である。各人がそれぞれに4000日の無事故無違反、積み荷トラブルなしを目標にする。そして4000日の無事故無違反を達成したら、もう一度ゼロから4000日を目指すというもの。「4000日を達成するには約11年かかります」(木南社長)。そのためS-DEC4000を最初に達成したのは2003年で2人だった。
同社では、社員満足度(ES)の追求が顧客満足度(CS)の向上につながると考えている。その取り組みの一つが「満点情報カード」だ。これは社員同士で、誰かにやってもらって良かったことを「〇〇さんありがとう」と内容をカードに記入して自分の職場に貼りだす。このカードの中から1カ月単位で職場MVPを選ぶ。選ぶのは各職場の管理者たちである。全社MVPは各職場の責任者8人が本社に集まり、役員も加わって選ぶ。そして毎年4月に開かれる経営発表会では、毎月のMVP12人を表彰する。さらに年1回は、全員の満点情報カードを印刷して製本する。一方、顧客満足度の向上を目指す取り組みでは、CSミーティングを毎月1回開催している。顧客満足度を考えながら仕事をするようにするためだ。ミーティングは録画して社内限定のYou Tubeで全員が動画で見られる。安全教育やトラブル報告(管理者がトラブル原因を分析)、社長メッセージなどもYou Tubeで流している。
<物流ジャーナリスト 森田富士夫>