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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第155回】    株式会社多摩中日運輸(東京都東大和市)

荷物量逓減の輸送分野から新規事業へのシフトを急ぐ

 日本人の人口減少が進んでいる。総務省の発表によると今年1月1日現在の住民基本台帳人口による日本人住民の人口は1億2242万3038人で、1年間に80万523人の減少だった。このようなハイスペースで人口減少が進めば、食品、飲料、衣料品、日用雑貨などの消費財の需要も減少する。さらに人口減少と相まって、ネット化の影響から需要が減少しているものに書籍や雑誌、新聞などがある。日本新聞協会によると2022年の一般紙の発行部数は2869万4915部で、10年前の2012年と比べて1502万8246部の減少。さらに発行部数がピークだった2001年からは1886万4137部の減少である(2022年はピーク時の60.3%)。日刊紙の数もピーク時の124から12紙の減少となっている。部数の減少で休刊ないしは廃刊となった新聞が20年間で12紙もあったことになる。新聞輸送をしている事業者は新規分野の開拓が必須だ。

 多摩中日運輸(東京都東大和市、荒川隆義社長)も長年にわたって新聞輸送をしてきたトラック運送事業者であり、新聞輸送をベースにしながら、他の輸送分野への進出が急務になっている。同社の設立は1976年12月で荒川社長の義父である故永牟田孝平氏が創業した。「創業当時の最初の5年間ぐらいは自らも新聞販売店をしながら、工場から多摩地方の販売店への新聞輸送もしていた」(荒川社長)ようだ。その後は販売店を止めて新聞輸送を専門にする運送会社になった。また設立時の有限会社から2006年に株式会社に商号変更している。社名の通り取引先は東京新聞である。現在は、本社の他に東大和市内に営業所を置き、営業所が配車など実務面での実質的な本社機能を持っている。保有車両数は1㌧バン車11台、2㌧バン車3台、2㌧幌車1台、軽貨物1台。従業員数は正社員8人と非正規社員25人で全員がドライバー職、そのうちの8人が女性ドライバーである。

 従業員の勤務形態も様々で朝刊輸送だけの人もいれば、週1、2回勤務という人もいる。新聞輸送の特性として、1人のドライバーで朝夕刊を運ぶ場合には、労働時間の上で朝刊と夕刊の間隔が大きな課題になっている。多様な働き方の人で上手に勤務ローテーションを組むことが重要になる。多摩中日運輸では、朝夕刊とも木場(東京)の印刷工場と、戸田(埼玉)の印刷工場に新聞を引き取りに行く。新聞を届ける先は東京新聞を取り扱っている東京・多摩地区全域の新聞販売店だ。同社は創業以来このような新聞輸送を行ってきた。だが、先述したようにどの新聞も部数の減少が続いている。部数減少によって各戸への配達密度が薄くなっても、新聞販売店としての宅配体制は維持しなければならない。これは宅配をしている販売店だけでなく、工場から販売店への新聞輸送も同様で、部数減少に伴って輸送効率が悪くなってくる。さらに広告(新聞チラシ)も減少してきた。

 「部数の減少、広告の減少もあって昨年秋に取引条件が見直されました」(荒川社長)という。このようなことから新規分野の開拓は急務だが、多摩中日運輸では3年ほど前から新規分野のサービスの開発に取り組んできた。新聞輸送を経営の基盤にしつつ新しい分野を開拓していく。その一つが「すっきりサービス」である。これは高齢者のための片づけで、①荷物整理=顧客と一緒に何が必要で何が必要ないかを考える、②荷物分別=資源ごみ・リサイクル品・不用品に分別、③荷物処理=資源ごみとリサイクル品は処分し不用品は各自治体の廃棄処分方法などを紹介する、というもの。だが現在でもまだ軌道に乗ってはいないようだ。荷物を分別して廃棄処分にする物は一般廃棄物処理業者との提携で対応する計画だった。だが、提携が上手くいかなかったという。そのため「すっきりサービス」は現在のところはペンディングの状態で、今後、さらに企画を再検討する予定のようだ。

 新規開拓のコンセプトは「夕刊を運んだ車両が帰りに運べるような荷物の開拓」(荒川社長)である。夕刊を最後の販売所に降ろすのが13時から13時30分ぐらいで、営業所に戻ってくるのが14時ぐらいになる。この帰りの空車を活かそうという狙いだ。このように13時から13時半に夕刊輸送が終了し営業所に戻る間に運べる荷物の開拓に力を入れている。車両の稼働効率を高め、固定費を増やさずに売上を増やせる荷物の開拓である。ドライバーの労働時間もさほど長くしないで済む。それが「たまちゅう定期便」だ。夕刊を届ける新聞販売店は決まっているので、その帰荷として運ぶ「定期便」である。だが「スポット的な荷物が多くなる」(同)という。そのような中で3年前から始まったのが、小中学校などに紙製品を配送する仕事で、現在は3台になっている。このように同社では新聞輸送だけの経営から、「一般貨物にスライドしていく」(同)ことを経営方針に掲げている。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>