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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第156回】    株式会社ロジックスライン(千葉県成田市)

安心・安定へ10月より歩合制から時間賃金に移行

 「2024年問題」というとドライバーの労働時間短縮だけに関心が向いている観がある。労働時間短縮は当然だが、重要なのは労働時間を短縮しても賃金が減らないことである。当面は従来の賃金を維持し、いずれは賃金を上げていくようにするのが、事業者にとっての「2024年問題」なのである。このような背景の中で、ロジックスライン(千葉県成田市、沢田秀明社長)は9月9日、成田国際文化会館小ホールに従業員を集めて「給与改定説明会」を開いた。これは「2024年問題」を半年後に控え、労働時間短縮に取り組むとともに約20年間続けてきた歩合重視の賃金体系から、時間重視の賃金体系に移行することを従業員に説明するために開催したもの。基本的には月45時間の「定額時間外手当」を加えた固定賃金とし、45時間を超える残業には残業代を支払う。新賃金体系には10月(11月支給分)から移行し、コンプライアンス最優先の企業を目指す。

 ロジックスラインの設立は1998年7月1日で、事業許可を取得して営業を開始したのが同年11月9日からである。現在は本社営業所(倉庫6140㎡併設)、成田空港営業所、車両モータープール(第1車庫、第2車庫)がある。保有車両数は39台(大型車22台、4t車12台、2t車5台)で、ドライバー数は33人。業務内容としては、航空貨物、海上貨物、一般チャーター便や小口混載便などを行っている。航空貨物は成田国際空港から輸入貨物の全国配送や、国内各地からの輸出製品の引き取りなどである。また、一般チャーター便や小口混載便は大手事業者との提携などで行っている(自社混載便もある)。これら運送業務の他に、成田空港営業所では成田空港内で荷物のダメージチェックやトラックへの積み込み作業などのハンドリングも行っている。だが、創業当時からしばらくの間は、改善基準告示などあまり気にしていなかった時期もあったようだ。

 そのような中で労働基準監督署から巡回指導が入って是正勧告を受けた。さらにその後、運輸支局からの監査が入って労働時間などを厳しく指導されたという。それを機に安全に真剣に取り組むようになった。コンプライアンス重視の経営に転換し、客観的品質の認定・認証などにも力を入れるようになったのである。2014年6月からはドライバー全員にスマートフォンを貸与し、ドラレコに録画されたヒヤリハットのデータをパソコンに落として全員のスマフォに送信して全員に注意を喚起するようにもした。このようにコンプライアンス重視の経営に転換したが、賃金体系などは約20年前と基本的には変わらずに今日まで来てしまった。「安全手当や講習会議手当など20年間でいろいろな手当てを増やす形で来てしまった」(沢田社長)。だが、基本は歩合制賃金である。一番大きな問題は「残業の概念がなかった」(同)ことである。

 しかし、この約20年間に社会的な環境も大きく変化してきた。「他業種から入ってくる人は、何時間働いたからいくらもらえる、という感覚が強い」(沢田社長)。一方、最近は運送業界でも固定残業代を含む時間給が少しずつ増えつつある。その大きな契機になっているのが最大年間残業960時間の「2024年問題」である。このような背景もあり、また25周年という会社の大きな節目ということもあって、外部のコンサルタントも加えて昨年10月に新賃金体系への移行を目指すことにした。1年間をかけて検討し、今年10月(11月の支払分)から新賃金体系に移行する。賃金体系改定の大きなポイントは、「歩合制の要素が大きかった従来の体系を時間軸でとらえ、未払い残業防止に注視した」(同)ことである。新賃金体系で大きく変わる点は「定額時間外手当45時間相当分を含ませ、交通費の一律支給から通勤距離に応じた通勤手当にすること」(同)だ。

 月の残業時間が45時間以下でも定額時間外手当は支払われるので「ドライバーの不安と戸惑いをなくす」(沢田社長)ことができる。もちろん残業時間が45時間を超えた場合には残業代が支払われる。このようにしてドライバーの収入を安定させて保証し、「1日、月間、年間の拘束時間の短縮や休息期間の8時間から9時間確保、長時間運転の防止その他の条件をクリアしていく」(同)方針だ。そのため「賃金体系の改定とあわせて就業規則など他の規定も見直した」(同)。さらに同社では、労働時間の短縮などを可能にする仕組みの導入なども考えている。航空貨物は通関の時間が読めないために、待機時間が分からないし夜間の積込みが多い。このような労働条件を解消する仕組みである。ロジックスラインでは11月18日に25周年の記念式典も予定しているが、25周年を機に賃金体系だけではなく組織や社内ルールの整備なども進める、としている。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>