運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事
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【第157回】 日晶運輸株式会社(北海道北広島市)
来年3月までに「2024年問題」全員クリア見通し
日晶運輸(本社・北海道北広島市、佐藤潤一社長)の設立は1969年12月。だが、一般貨物自動車運送事業の免許(当時)を取得したのはその1カ月前の同年11月だった。これには訳がある。同社はそもそも日糧製パンの運輸部門だったからだ。運輸部門として日晶運輸の創業者が出来高制で運送業務を行っていたという。そして営業免許を取得してから独立したのである。このような経緯から、最初は日糧製パンの工場間の幹線輸送からスタートしている。だが、現在の取引先別売上比率では、セコマが70%、日糧製パン10%、タカラスタンダード10%、その他が10%という割合になっている。現在では北広島市の本社および本社営業所の他に大谷地営業所(札幌市白石区)、旭川営業所(旭川市)、釧路営業所(釧路市)、函館営業所(函館市)、帯広営業所(帯広市)がある。保有車両数は1トンバン車からトレーラまで256台。営業倉庫は約3000平方メートルである。
従業員数は385人(うちドライバー350人)で、同社では3カ月間の使用期間を経ると全員を正社員として採用する。だが「傭車はあまり使わず、自車両が多いため人件費比率が高い」(武野公一専務)という。取引が一番多いセコマの業務では、セコマのグループ会社であるオリタ物流と業務領域を分担している。日晶運輸はセンター間輸送やセンターからの店舗配送を受託している。配送業務は札幌市内や道内主要都市のエリアで行っている。その他の地域の店舗配送や調達物流はオリタ物流が行うという役割分担のようだ。セコマの物流体制は進んでおり、「店舗配送でも配送車両が調達物流の帰り荷を積んでセンターに戻る。また、それらの調達商品をセンター間の拠点間輸送の車両でも積んで帰るといった形で実車率を高めている」(同)。この点については札幌パークホテルで開かれた全ト協の全国トラック事業者大会の記念講演でセコマの丸谷智保会長も話していた。
タカラスタンダードの物流では本州から北海道への幹線輸送を行っている。センター内の作業も日晶運輸が受託し、物流センターから道内各地への幹線輸送や現場への納品も行っている。この現場配送ではドライバーの作業軽減や労働時間短縮などから、今年10月より納品時の作業条件を変更した。従来は現場への納品時に、ドライバーが各部屋までシステムキッチンなどを搬入していたのである。もちろん1人では運べないので、搬入作業のために派遣社員を3人、あるいは5人つけていた。派遣社員が3人や5人と奇数なのは、ドライバーも含めて2人1組の偶数でないと搬入作業ができないからだ。もちろん作業料は収受していたが、「派遣社員の確保も大変で、ドライバーの労働負荷軽減や労働時間短縮もある」(武野専務)。そのため日晶運輸では「約1年前から荷主と話し合いを続けてきた結果、10月から個々の部屋までの搬入作業はなくなった」(同)という。
またこの間、日晶運輸では安全管理やサービス品質の向上にも努めてきた。そのため客観的品質の認証や認定の取得にも力を入れて取り組んできている。2009年には函館営業所で安全性優良事業所(Gマーク)の認定を取得し、6営業所全部がGマーク認定になった。また、2019年には本社営業所でグリーン経営の認証を取得(その後更新)。さらに2021年には健康経営優良法人(中小企業部門)の認定と働きやすい職場認証制度(一つ星)の認証を取得している(いずれも2023年にも取得)。このようにして同社は今年度で55年目を迎えた。そのようなことから今年度を「新たなチャレンジの年」と位置づけて、①事故削減に向けた取り組み、②退職者を減らすための施策、③新人採用方法、④燃費改善に関する施策、⑤修理修繕費削減に向けた施策、⑥人材育成、⑦「2024年問題」への対応など、総合的な施策に取り組んでいる。
とりわけ人材の採用と定着には力を入れ、定年や嘱託退職者を除いて年間退職者を全従業員数の7%未満にするという目標を立てている。募集に当たっては「働きやすい職場認証制度(一つ星)」取得をPRして、働きやすい職場であることをアピール。新たな募集の方法としてはSNSの活用も始め、今年10月には初めての試みとして、本社所在地である北広島ハローワークで会社説明会も開いた。さらに新たな採用形態として「残業なし8時間勤務乗務員」や「週休3日乗務員」などの導入も検討している。「2024年問題」への対応では、就業規則を改定して2023年4月から「4週8休」制を導入し、2連休が取れるようにした。長距離輸送では1カ月の変形労働制を採用し隔日勤務にしている。その結果、「9月実績で残業時間が80時間を超えるドライバーは全体の5%弱の15人まで減少し、2024年4月までには全員がクリアできる見通しになっている」(武野専務)。
<物流ジャーナリスト 森田富士夫>