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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第99回】 栄運輸株式会社(群馬県伊勢崎市)

安全衛生優良企業・健康経営優良法人など「人で差別化」

 働き方改革が大きなテーマになっている。具体的には休日の確保などを含めた労働時間短縮が直面する課題だが、本来の目的は働く人たちの安全や健康などである。そのような中で栄運輸(群馬県伊勢崎市、篠原利行社長)は、2017年、2018年と経済産業省の健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定を得、さらに昨年10月には厚生労働省の安全衛生優良企業の認定も取得している。もちろん、グリーン経営認証や安全性優良事業所認定(Gマーク)は以前から取得しているが、2016年には「あんぜんプロジェクト」参加、「がん対策推進企業アクション」登録、全国保険協会(群馬支部)「生き活き健康事業所宣言」登録など、従業員の安全や健康管理にも積極的な取り組みをしてきた。なぜ、安全や健康などに力を入れているのか。栄運輸は貸切契約を主に事業を展開しているごく普通の事業者だ。そこで、他社との差別化を図るのは人だと考えているからである。

 栄運輸は1964年に篠原正一会長が創業し、1989年に法人組織として設立した。野菜などの輸送からスタートし、大手路線事業者の中継所などもやっていた。だが、これらは「会社の概念ではなくトラック屋的な感覚だった。現会長が私に仕事を継ぐなら法人化するということで会社として設立した」(篠原利行社長)のである。篠原利行氏は会社設立と同時に入社。その当時は、塩ビ物干しやその土台、ドリンク類、石膏ボードなどの建材関係、その他を運んでいたという。現在の保有車両数は34台で、内訳は15tアルミウィング車17台、4tアルミウィング車14台、4t保冷車2台、2tアルミバン車1台である。このうち4tアルミウィング車2台は最近増車したばかりだ。「人より先行して2台増車した」(同)ということで、ドライバーの確保よりも増車を先行させたようだ。そんなことから従業員数は35人で、そのうちドライバーは31人である。

 栄運輸では電子・電気部品、空調機器関連部品、板金部品、農業資材その他を運んでいる。取引先は「メーカーや同業者を問わず、長続きするような仕事をやっていく」(篠原社長)という方針だ。同社の原則的な積込み条件は、①1カ所積の1カ所降ろし、②パレット・フォークでの積み降ろし、③積み降ろし待ち時間は1時間以内、④積込み時間帯=7:00~16:00、⑤配送エリアは千葉県の一部を除く関東圏で、もちろん要相談で対応する。また、輸送距離も片道150㎞ぐらいに絞っている。労働時間の問題もあるが、車両の実車率を重視しているからだ。つまり、様ざまな取り組みを可能にするための原資を確保するには「実車率を上げるしかないので、保有台数の1.5から1.8倍の荷物を確保するようにして、傭車はあまり使わず自車両の稼働率を向上するようにしている」(同)。健康は安全面でも有効で、同社の全車保険フリート優良割引契約は70%になっている。

 取り組みの最初は掃除から入った。「毎日、社内を掃除して回り、ごみのたまりやすい所はデジカメで写真に撮るようにした」(原隆臣営業主任)という。「掃除が好きな人も嫌いな人もいるが、続けていると自分からごみが落ちていないかを探すようになってくる。ごみを探せないような人は事故を起こしやすいという傾向もみられる」(同)。また、掃除を続けていると、ドライバーが帰ってきてから自分たちで自主的に安全について話し合うような場面も見られるようになってきた。このような社内の変化は、「自分の予想を超えることだった」(篠原社長)という。その後の様ざまな取り組みも、アプローチはドライバーたちからが多い。トラック協会主催の各種セミナーは管理職が受講することが多いが、ポイントは資料などから抜粋して全員に伝えるようにしている。そのうちに、「ドライバーが資料をみて、これはどういうことかと質問してくるようになった」(原主任)のである。

 「安全衛生優良企業についても、大手荷主に入っているドライバーが現場の安全をどうすべきかを荷主から聞いてきた」(原主任)のがきっかけだ。同社では、安全などについての知識を持ったドライバーたちで4部門の担当がいる。交通担当3人、荷役担当3人、環境保全担当6人、安全衛生3人で、この4部門が毎月、安全衛生行動目標を設定する。その月の4つの目標に対して、自分はどうだったかを全ドライバーが毎月末に報告書を出すことになっている。このように社内で安全などの取り組みを進めてきた。従業員の健康についても通常の健康診断以外に、生活習慣病についても取り組みをしている。ちなみに栄運輸では、31人のドライバーのうちの5人が運行管理者の資格を取得している。このような現在の会社の状況を篠原社長は「良い方向に進んでいっている。自分たちで自由に考えてやってくれれば良い」。基本的方向だけを示して、あとは任せるという姿勢のようだ。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>