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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第114回】   石見サービス株式会社(兵庫県丹波市)

危険物の混載輸送で提携会社を含む独自の仕組みを構築

 化学品物流を専門にしている石見サービス(兵庫県丹波市、川口浩樹社長)では、集荷→保管・在庫管理→混載幹線輸送→配送という独自のシステムを構築している。同社の設立は1978年で、化学品会社の貨物自動車取扱事業からスタートした。1987年には限定免許を取得し(1991年に限定解除)、1998年には倉庫業にも進出した。このような経緯から、倉庫も危険物倉庫が多く、運送部門も危険物輸送に特化した事業展開をしてきた。現在の事業内容は貨物自動車運送事業、倉庫業、構内作業受託、産廃収集運搬などである。役員を含む社員数は69人で、そのうち現場部門では倉庫業務15人、工場内作業20人、ドライバー20人。保有車両数は35台で、内訳はトレーラヘッド4台、シャーシ5台、13t車11台、7t車8台、4t車6台、1t車1台である。1t車を除き車両は全部ウィング車だ。2019年9月期決算の売上高は11億2000万円。

 取引先は化学品メーカーを中心に約30社。これはスタート時の荷主との関係などから化学品関連の取引先を開拓してきたことによる。丹波市は兵庫県でも内陸部に位置するが、丹波エリアには大手化学品メーカーの工場が4つもある。同社は地元にあるこれら総ての工場と取引があり、化学品を全国に運んでいる。同社の取扱い荷物にはポリウレタン、アクリル樹脂、顔料、着色剤、その他があり、ほとんどの製品は液状やペレットで、荷姿はガロン缶、ドラム缶、タンクなどである。石見サービスの基本的な物流業務の仕組みは、これらの化学品を工場から集荷し、同社の危険物倉庫で保管・在庫管理し(スルーの荷物もある)、ほとんどの荷物は積合せて全国各地に輸送して、輸送先にある各納品先に配達する。そして、輸送先のエリアにある化学品メーカーから帰り荷を積んで帰社する、というのが基本的なパターンになっている。

 このような石見サービスの仕事の仕組みは、長年の間に形成されてきたものだが、大きな課題は荷物の小口化が進んできたことであった。この荷物の小口化の進行は荷主にとっても物流上の大きな課題になっていた。800㎏以上の荷物は特積事業者からは敬遠され運賃も割高になる。一方、石見サービスにとっての悩みは輸送先での納品カ所の増加だ。幹線は積合せて運べても、納品先が増加して広域になり、エリア配送が非効率になってきた。さらにドライバーの労働時間といった問題もある。このようなことで「平成25、6年ごろから地域での物流合理化の必要性を感じていた」(川口社長)という。そこで、システム化の構築に着手し、「平成27(2015年)年ごろには基本的システムを確立した」(辻敏宏専務)のである。簡単に言うと、石見サービスでは配送エリアにおける提携事業者も含めた分業体制で小口多カ所納品への対応と作業効率化を図ったのである。

 基本的な仕組みは、①地元の化学品工場4社から製品を集荷する。この集荷は高齢ドライバーが担当している。同社は60歳定年だが、希望者は1年ごとの契約更新で65歳まで継続雇用している。集荷専用車両はトレーラと大型車で、1日中集荷をして回る。②集荷した荷物のうちストックのものは保管・在庫管理する。スルーの荷物は当日の便で積合せて幹線輸送。ストックとスルーの荷物の割合はほぼ半々という。③4社の製品を積合せて幹線輸送する。長距離輸送は若いドライバーが乗務して行っている。④関東や九州、また長距離ではないが配送効率の関係から大阪市内などは危険物の取扱いをしている事業者と業務提携し、提携先に末端配送を委託する。⑤関東や九州などからは帰り荷を積んで帰ってくる。このような仕組みを最初に導入したのは関東方面で2015年だった。

 現在では九州の事業者とも提携。また長距離ではないが大阪市内も配送効率が悪いので、地元の化学品を運んでいる事業者と提携している。同社ではこのような仕組みを導入した2015年に、同社の持ち込み運賃と提携先の配送料を分けて荷主に提示した。荷主との契約は石見サービスだが、配送料は提携先から提出された見積もり金額で合意を求め、荷主の了解を得たのである。石見サービスのこれら一連の取り組みが評価され、全ト協の「青年経営者等による先進的な事業取組に対する顕彰」で銀賞を受賞した。同社では賞金の70万円に不足分を自社で負担して3D減速路面標示を設置した。メインの荷主の工場は同社の本社と道路を隔てた向かい側にある。6m道路の市道で制限速度は40㎞/hだが、中学校の通学路にもなっている。そこで同社では丹波市の建設部道路管理課と連携しながら、地元警察の許可を得て、3月19日に3D減速路面標示を設置したのである。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(写真提供:石見サービス)