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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第118回】    山岡産輸株式会社(千葉県市川市)

3カ年計画で働き方を大きく改革

 山岡産輸(本社・千葉県市川市、加藤健一代表取締役、橋口泰幸社長)は7月6日から「社員のキャリアと働き方改革」の3カ年計画をスタートした。橋口社長が運行管理課長として山岡産輸に入社したのは6年前だった。だが、長年にわたり大手事業者2社の長距離幹線輸送の仕事を主体に行っていた同社は、ご多分に漏れずドライバーの長時間労働など労働条件は劣悪で「典型的なブラック企業」(橋口社長)だったという。そこで運行管理や配車だけでなく、労務管理なども兼務して3年かけて労働時間短縮などに取り組んだ。その後、社長に就任してからは売上目標を掲げて事業の拡大を図るべく、昨年7月から2022年6月期までの中期経営計画を掲げ、売上高40億円、営業利益4億円、自己資本比率40%を目標に取り組んでいる。さらに今年7月からは2023年6月期までの3カ年計画で働き方改革を進めることにしたのである。

 山岡産輸の設立は1986年で、当初は鉄鋼などを運んでいたようだ。その後、長年にわたって大手事業者2社の長距離幹線輸送を主体に事業を行ってきた。現在は創業当時とは株主なども代わり、取引先の数も増やしてきた。7月28日現在の保有車両数は232台で、内訳は大型車が153台、4t車35台、1tバン車33台、トレーラヘッド3台、同シャーシ1台、残りは4tユニック車や2t車などである。従業員数は219人。本社の他に、中部営業所(岐阜県各務原市)、同小牧車庫(愛知県江南市)、大阪営業所(大阪市大正区)、東大阪営業所(東大阪市)、同池島車庫(同市)、川崎営業所(川崎市川崎区)、東京営業所(江東区)がある。このうち東京営業所は今年6月に開設したもの。事業内容は一般貨物自動車運送事業、貨物軽自動車運送事業、貨物運送取扱事業、産業廃棄物収集運搬などである。2020年6月期の売上高は29億円。

 6年前の売上は19億円で保有車両数は104台、ドライバーは85人だった。ところが長時間労働の是正などに着手すると、給料の減少などもあって一部のドライバーが反発。一度に10人のドライバーが退職するようなこともあったという。退職の理由は「話が違う」というものだった。長時間労働を前提にした歩合給による給料額が得られなくなって入社時の話しと違うという意味だ。他のドライバーたちも、「会社が何をしようとしているのかビクビクしている状況だった」(橋口社長)。結局、「金できたドライバーは、金で移っていく」(同)ことになる。最近の採用では他の運送会社から転職するドライバーは少なくなり、異業種などからの応募者が増えている。新卒採用もするようになった。だが当時、10人ものドライバーが一度に辞めれば現場が大変だ。「自分もトラックに乗って仕事をこなした」(同、当時は課長)。それでも劣悪な労働環境の改善を進めたという。

 19億円あった売り上げは1年間で16億円に減少し、資金繰りも悪化して大幅な債務超過に陥った。それでも3年間で長時間労働などをかなり改善し、次に掲げたのが売上拡大である。それまでの主な取引先は大手事業者2社だった。2017年6月期でみるとその2社で全売上の90%を占めていた。この大手事業者2社への過度な依存度を是正するには、新規の取引先を開拓して相対的に売上比率を下げなければならない。そこで2019年7月からスタートしたのが2022年6月期までの中期経営計画である。2019年6月期の売上高は23億5000万円だったが、中期経営計画1年目の2020年6月期は売上高が29億円なので、この1年間で6億5000万円ほど売り上げを増やしている。中期計画の目標達成には今期と来期の2年間で11億円の売上増(約38%増)を実現しなければならない。だが、「ある程度の裏付けを持った目標値」(橋口社長)だという。

 このような売り上げ拡大の目標達成への努力と同時に推進しているのが働き方改革である。山岡産輸の2023年6月までの働き方改革3カ年計画では、①80時間/月以上の残業をする社員の割合を2020年(実績)13%から2023年(目標)0%に、②有休消化率(取得日数計/付与日数計×100)を25%から50%に、③ダイバーシティ率(移住労働者、LGBTQ、障害者の従業員割合)を7%から10%に、④女性従業員在籍率を11%から20%に、⑤女性管理職比率(部長、次長、課長の役職に就く社員内の比率)を20%から30%に、⑥20歳代従業員在籍率を17%から30%に、⑦離職率を14%から10%に、という目標を掲げている。そのために中継輸送の導入や倉庫業への参入なども計画。同時に、取引先は多数になってきたが、これら荷主の多くが大手同業者なので、直接取引の荷主の開拓も併せて進めていく方針だ。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>