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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第125回】    トーエイ物流株式会社(埼玉県久喜市)

外的要因でグラつかない企業へ積極的投資

 物流事業者の場合には、コロナの影響が取引先の業種によって様々に異なる。トーエイ物流(本社・埼玉県久喜市、遠藤長俊社長)も例外ではない。取扱い品目でみると、酒類の関連ではコースターやポスターなどの販促品が半減したという。これは販促品を製造している工場から同社の物流センターに運ばれ、同社センターから全国に宅配便を使って輸送するという業務。また、銅関係も自動車部品向けなどで影響を受けた。さらに、化粧品の売上減少に伴い、同社で取扱っている化粧品用の容器も影響を受けているという。だがその反面、「倉庫部門は堅調」(遠藤社長)である。特に危険物倉庫への需要が増えているようで、同社では4月上旬のオープン予定で現在、同県本庄市に危険物倉庫の建設を進めている。トーエイ物流ではこれまでも危険物事業には力を入れてきた。今後とも「危険物事業には力を入れていく方針である」(同)。

 危険物事業分野での主な取扱商品は、カー用品(ケミカル用品、エンジンオイルなど)、家庭用品(殺虫剤、塗料、潤滑剤など)、工業用品(各種溶剤、工業薬品など)、その他(大型蓄電池、香料、医薬部外品など)である。これまで危険物倉庫は白岡物流センター(埼玉県白岡市)、大利根物流センター(同加須市)、新堀営業所(同久喜市)だったが、本庄市の危険物倉庫がオープンすれば4カ所になる。本庄市の危険物倉庫は「地主から話があったので、床面積が990㎡の危険物倉庫4棟を建設中だが、すでに3棟はほぼ埋まっている」(遠藤社長)。危険物倉庫に対する需要は多く、「塗料系の引き合いがけっこうある。だが小ロットの需要が多く、一般的に契約期間も短い案件が多い」(同)。そこで「小ロットで契約期間も短いニーズに対応できるようなサービスの商品化ができないかを検討している」(同)。このようにトーエイ物流では危険物事業に力を入れていく方針だ。

 一方、約1年前に開設した名古屋営業所(愛知県小牧市)もこの間、順調に業績を伸ばし「売上が月5000万円までになってきた」(遠藤社長)。そこで現在は大型増㌧車が7台だが、増車して自車両を15台まで増やす計画である。この約1年間は傭車をかなり使ってきたが、自車両の比率を高める方針という。「自車両はリスクもあるが利益率が高い。傭車では手伝ってもらうという関係になるが、自車両なら労働時間などの法令を順守する範囲内で、配車担当者の裁量で車両の稼働効率を高めることができる」(同)からである。同時に、自車両のさらなる増車も視野に名古屋営業所の移転も計画している。名古屋は運送事業の営業所なので、30台以上の車両を置ける土地を4月に購入して拡張を図る。「ドライバーの確保は時間がかかっても何とかできる。それに合わせて2、3台ずつ納車するようにする。何をやっても必ずリスクは伴う。要はバランスの問題」(同)という考えだ。

 さらにトーエイ物流では今秋の完成予定で本社を建設中である。新本社は従来の本社の敷地内に建設するもので、新本社が完成したら現在の本社は解体して駐車場にする。社員の駐車場が近くに分散しているので本社敷地内に集約する予定だ。人材確保の優位性などを考えると、建て替えを機に本社を移転して鉄道の駅に近い場所に移すことも考えたが、本社敷地内に建設することにしたという。コロナの影響もあって2021年3月期は売上高を80億円(単体)と見込んでいる。だが、積極的経営で「単体で売上高100億円が当面の目標」(遠藤社長)としている。コロナの影響を受けながらも積極経営を推進しているのには訳がある。リーマンショックや今回のコロナ禍などの外的要因の変化があっても安定した経営ができるような企業を目指してきたからだ。2009年6月に社長を継いでから今日まで、「多少のことがあってもグラつかない企業を目指してきた」(同)。

 まず、トラック運送の延長としての物流センターから、物流センターに付随する業務としてのトラック輸送へと発想の転換を図った。また人材育成にも力を入れ大学や高校の新卒採用を続けてきた。「初期の大学新卒採用者は現在、30代で課長クラスになっている」(遠藤社長)。大学新卒者の配属先は物流センター部門が多い。運輸部門の支店長は乗務員からの抜擢が基本である。同時に進めてきたのが「管理職の多機能化」(同)だ。企業規模にもよるが運送業界は管理職の固定化が多くみられ、その結果、職(担当業務)と人(特定の個人)が一体化する。そこで同社では管理職の多機能化により、人事異動ができるようにしてきた。たとえば埼玉支店には7営業所があるが、「数カ所の営業所を経験させて、同時に数字を見てその営業所の内容が理解できるようなスキルを付けさせている」(同)。このようにして外的要因が変化してもグラつかない企業に体質強化してきたのである。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(写真:資料提供:トーエイ物流)