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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第128回】    埼九運輸株式会社(埼玉県狭山市)

埼玉~九州の2マン運行を増車して13台に

 長距離幹線輸送でも一部の荷物では中ロット化が進んでいる。長距離輸送ではドライバーの労働時間短縮が大きな課題だが、中ロットの荷物を積合せて、埼玉~九州を2マン運行によって20時間以内で運んでいるのが埼九運輸(本社・埼玉県狭山市、髙橋秀樹社長)。九州~関東間で2マン運行している事業者は、筆者が直接確認しているのは、佐賀県武雄市の事業者と同社の2社だけである。そのうち積合せの幹線長距離輸送をしているのは埼九運輸だけだ。同社の創業は1975年で、会社設立は1979年である。同社は埼玉と九州間の輸送が「売り」で、それが社名にも象徴されている。最初は自動車メーカーの部品輸送からスタートし、当時は1人乗務で埼玉~九州の長距離輸送をしていた。現在は自動車関係だけでなくドライ食品および食材関係、紙関係、ドレスなどの衣料品、病院向けの医療関連用品、美容院向け消耗品、その他と取引先を拡大している。

 埼九運輸は本社の他に所沢ロジスティクスセンター(所沢市)があり、営業所としては狭山営業所(狭山市青柳)、鈴鹿営業所(三重県亀山市)、行橋営業所(福岡県行橋市)、所沢営業所(所沢市)、古賀営業所(福岡県古賀市)がある。また、車庫としては、日高車庫(日高市)、柏原車庫(狭山市柏原)、三芳車庫(入間郡三芳町)、仙台車庫(宮城県仙台市)がある。保有車両数は軽車両から大型増トン車まで182台だが、ほとんどが大型増トン車となっている(5、6、7月で21台を代替え予定)。従業員数は220人(パートを含む)。売上高は28億円である。この埼九運輸のセールスポイントの1つが埼玉~九州間の2マン運行による長距離輸送サービスだ。同社が2マン運行をスタートしたのは2014年だった。埼玉の発着起点は所沢ロジスティクスセンターまたは狭山営業所である。九州の発着起点は古賀営業所と行橋営業所の2カ所。

 埼玉の発着起点は、発または着の荷物の集荷や配送の地域的な多寡によって所沢LCと狭山のどちらを起点にしたら効率的かを各便の荷物の状況に応じて判断している。集配エリアは群馬県(上りの配送荷物が多い)、埼玉県中央部、埼玉に近い都内、茨城県(取手)、埼玉に近い千葉県などである。それに対して九州の発着起点は古賀と行橋の2カ所だが、これは集荷、配送が大分県と宮崎県なら行橋を起点とし、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島の5県は古賀にしているからだ。貸切荷物を運ぶ場合もあるが、中ロットの荷物を積合せて幹線輸送している。集荷・配送と幹線輸送は分離して運賃も別々に設定。幹線輸送の運賃は基本的にはサイズないしは重量の大きい方を適用して料金を決める。それに対して集配料金は、「基本料金があり、そこに集荷車両の大きさ、手積みか否かなどでプラスαがあり、これらはマニュアル化している」(髙橋社長)という。

 そして「埼玉~九州の長距離幹線輸送を2マン乗務にし、リードタイムの短縮で差別化を図っている」(髙橋社長)。なお、改善基準の2人乗務における特例では、運転者が同時に1台の自動車に2人以上乗務する場合で、車内に身体を伸ばして休息できる設備がある場合に限り、1日の最大拘束時間を20時間まで延長できる。また、休息期間を4時間まで短縮できる。そこで同社は埼玉~九州を2マン運行にしてリードタイムを短縮。同時に、パレット単位の荷物なら1パレットいくらという幹線運賃の安さも「売り」の1つになっている。事業者側でも積合せで積載効率を高めれば収入性が良くなる。集荷オーダーの受付時間は午前中で集荷時間は16時まで。基本的には配送車両が集荷をする。埼玉~九州の幹線輸送は、たとえば18時に埼玉を出発しても、翌日の午前中には九州に到着することができる。「飛行機より早く、安く」運ぶことができるというシステムである。

 BtoBでも全体的に中ロット化が徐々に進みつつあったが、コロナ禍でその流れが加速した。同社は昨年の4~6月は2マン以外も含む全体では荷物量がダウンした。だが、9月、10月ぐらいから引き合いが増え、チャーターも含めて新規取引も出来たという。とくに埼玉~九州の「コロナ特需」としては、「コロナで飛行機の便数が減った影響が出てきた。上下の荷物で問い合わせが20%ぐらい増えた」(髙橋社長)という。同社の2マン長距離輸送では、九州から関東への上りの積合せ荷物よりも、下りの積合せの荷物の方が少なかった。そのため下りの積合せ荷物の開拓が課題だったのだが、航空便の荷物は下りが多いので、同社にとっては飛行機の便数減はプラスの影響として作用したようだ。そのため「2マン運行の車両は12台でラウンドしていたが、3月20日に1便増やし現在(取材日は5月12日)は13台で運行している」(髙橋社長)。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(写真提供:埼九運輸)