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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第131回】    株式会社東邦運輸(東京都東久留米市)

BunBunのブランディング化で地域密着サービスに参入

 東邦運輸(本社・東京都東久留米市、中島秀治社長)は、1970年11月の設立で半世紀を超える社歴がある。東京多摩地区を主に一般運送、倉庫、引越、公共事業などを行っている。営業所は東京営業所(東久留米市)、立川営業所(立川市)、神奈川営業所(相模原市)、静岡営業所(静岡市清水区)の4カ所。それとは別に西東京倉庫(西東京市)と東村山倉庫(東村山市)、さらに東久留米市内に清掃事業部がある。また、2018年3月にはBunBun保育園を開設し、今年3月にもBunBun保育園Ⅱをオープンした。ちなみに「BunBun」とは同社キャラクターの「ハチのトビーくん」で、荷物の箱をもって飛びまわるトビーくんは車両その他に描かれている。現在の保有台数は38tトレーラから13t車、7.5t車、4t車、3t車、2t車、1.7t車、ワンボックスカーなど107台(セット)。車種はウィング車、パワーゲート車、平ボディ車、パッカー車などである。

 従業員数は200人(保育士なども含む)で約4分の1が女性だ。事業内容は①一般運送、②倉庫、③移転・引越、④公共、⑤保育園の5つに分類できる。一般運送で多いのは住宅建材で売上の約30%を占める。取引先の静岡の工場から立川営業所までトレーラで横持ち輸送し、立川営業所を基点に神奈川県、埼玉県、新宿区より多摩地区寄りの都下にある建材問屋や建築現場に配送している。一般運送では封書物、OA機器、家電、飲料、オフィス家具、自動車部品なども取り扱っている。倉庫事業では寄託契約だけではなく、仕分け、保管、梱包、輸配送といった一貫した作業も受託している。移転・引越部門では、引越専門協同組合の東久留米センターになっている。関連事業としては、グループ会社のトランクルーム(コンテナ収納)で家財などの一時保管もする。さらに同社が得意としているのが事務所移転などの法人引越だ。これまで企業移転にはかなりの実績があるという。

 同社では一般廃棄物収集運搬、産業廃棄物収集運搬も行っているので、引越に伴う廃棄物の収集もでき、廃棄だけではなくリユースなどの対応も可能だ。また、環境事業では古くなったエアコン、テレビ、洗濯機、冷蔵庫など家電廃棄物の収集(他社の持ち込みもある)からメーカーに戻すまでの引取場所の提供もしている。この引取場所には監視カメラを設置し、セキュリティには万全を期している。保管していたものは専用ラックに入れて各家電メーカーに戻す。この家電収集の幹事会社になるためには、会社の財務内容などのチェックも厳しいようだ。また、引越事業から派生したサービスとしてはハウスクリーニングや遺品整理なども行っている。公共部門では、学校給食の配送をしている。東久留米市の小学校、あきる野市の小中学校の給食配送である。また、家庭ごみの収集運搬では、地元の東久留米市の一般廃棄物収集運搬を受託している。

 なお、東邦運輸にはこれまで「営業専任者はいない。新規取引先の開拓は金融機関からの紹介が多い」(中島社長)という。たとえば宅配便や路線便では割高だが、貸切輸送では小さすぎる荷物など、「金融機関が取引先の企業で困っている荷物があると当社に紹介してくれて、当社はベースカーゴに合積みして運ぶことで荷主の悩みに答える」(中島社長)といったように取引先が拡がってきた。このように東邦運輸では多様な事業展開をしているが、同時に新しい時代のニーズにも対応していかなければならないと認識している。設立から半世紀以上が過ぎて、経済環境や社会環境も変化し、人びとの生活様式や働き方も変わってくる。そのような新しい時代に求められるのはどのような企業なのか。同社では物流をベースとしながら新たな事業領域を開拓していこうとしている。今後の基本的な方向性は「物流サービスの多様化と地域密着」(中島社長)である。

 近くには団地が多く居住者の高齢化が進んでいるので、最近ではゴミ出し代行サービスといったニーズも出てきた。エレベーターのない団地の住人が高齢化してゴミ出しも難しくなってきたからだ。今後は買い物代行サービスにもつながる。だが中小事業者が生活密着サービスに参入するには知名度を高める必要がある。そのブランディング化の1つが保育園事業だが、「第1保育園が4年目に入って少しずつ認知度が高まってきた」(中島昭治専務)という。7月には第2保育園で園児を対象にイベントを初めて開いた。「トラックを持ち込み、運転席や冷凍車の庫内に子供たちを乗せたりした。コロナが終息したら交通安全教育なども行っていきたい」(中島専務)と考えている。このように東邦運輸ではブランディング化で地域密着を図り、2マンや1マンの宅配、ゴミ出しや電気の交換など、地元の人たちが日常生活で困っていることをサポートできるような企業を目指している。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(写真提供:東邦運輸)