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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第132回】    株式会社エー・シー・トランスポート(埼玉県戸田市)

10年後に年商50億円目指す、女性5人の広報部も開設

 エー・シー・トランスポート(本社・埼玉県戸田市、池永和義社長)の創業は2001年1月で、会社設立は翌年の2002年1月である。2003年に一般貨物自動車運送事業の許可を取得した。今年が創業20周年で来年が会社設立20周年になる。創業者の池永社長は運送会社にドライバーとして勤務した後、配車担当をしていた。だが、その運送会社が他の運送会社に吸収合併され、池永社長もドライバーたちと一緒にその運送会社に移ったが、その後、会社を辞めて自分で運送会社を始めたのである。2つの運送会社で配車を担当していたので、以前から知っていた取引先などの支援もあって比較的順調に事業を伸ばして行った。取引先からさらに新規の荷主を紹介してもらうなど、取引先の拡大とともに保有車両数も増えていった。だが、創業10年目ぐらいに大きな試練に直面した。35、6台から38台ぐらいに増車してもドライバーが辞めてしまうのである。

 「10年ぐらいで30台以上の規模になり、小さな成功に胡坐をかいていた」(池永社長)という。そして「人がいないと事業はできないことを痛感した」(同)。それまでは「会社の外にばかり目が向いていて、社内には目が向いていなかった」(同)からだ。辞めてもいくらでも補充ができる、という意識があってきつい労働を求めていた。そのため大きな転換期を迎え、そこから汲み取った教訓は「人」の大切だった。それを機に、池永社長は外部のコンサルタントからも経営指導を受けるようになった。現在は本社の他に新宿事務所(新宿区)、名古屋営業所(名古屋市)があり、従業員数は90人で保有車両数は70台。取扱い荷物も精密機械、食品、日用品、家具、建築資材、コンビニ配送、遊技機運搬、集荷代行、オフィス移転、保管・仕分け・梱包など多様だ。2020年10月期の売上高は10億円で、2021年10月期は10億7000万円を見込んでいる。

 同社が得意としている精密機器輸送は利益率が高いが毎日の仕事ではない。そこで「4人の多機能ドライバーが精密機器輸送を優先的に担当する」(池永社長)。4人は精密機器輸送がない日は他の輸配送を担当することで、労働時間短縮のために勤務ローテーションの調整役を兼ねる形だ。同社では名古屋営業所を除いて、基本的には関東圏内を輸送エリアにしている。しかし、精密機器輸送は全国どこに行くか分からないが、帰りの高速利用料金も荷主に負担してもらいできるだけ早く帰社する。車両回転率を上げ、車両の稼働効率を高めるとともに、ドライバーの労働時間を短縮するためだ。同社は基本的には土日休みとし、シフト制勤務か完全週休2日制を選択できるようにしている。さらに土日だけ副業で働きたいという人を外部から採用することで、基本的に日曜日は全員が休めるようにしている。このような勤務ローテーションで従業員の残業をほぼゼロにしている。

 同社では10年前の教訓からISO39001、安全性優良事業所、健康経営優良事業所、働きやすい職場、ホワイト経営、安全マネジメントなど、客観的品質の取得に力を入れている。新卒の定期採用を始めたのは6年前からだが1期生は3カ月で辞めてしまった。「採用だけにしか気が行っていなかったから」(池永社長)だ。そこで採用後の教育・育成が重要なことに気づき、2期生からは「半年ぐらい時間をかけて教育するようにした」(同)。1カ月の座学。外部の整備会社にも1週間ほど出向させて車の構造や整備などの初歩的な知識も得るようにする。さらに倉庫にも2カ月といったように約半年間は教育にあてている。また、5期生までは全員が大学新卒だったが、今年4月から初めて高卒新卒者も採用したので、教育の中には準中型など運転免許の資格取得も加えている。同社では新卒採用者だけではなく社員教育には力を入れ、社員教育費として年間800万円を計上している。

 同社では10年後の創業30年に年商50億円を掲げている。そのため「関東に4カ所の拠点を配置して、名古屋も含めて分社化する」(永池社長)。関東と名古屋の幹線輸送も8月から始めた。分社化は「社員のキャリア・プランとして社長になることができる選択肢もそろえる」(同)ためで、ホールディングス制も構想している。このような中で新卒で今年4月に入社した女性5人で構成する広報活動専門の「チーム・フロンティア」を立ち上げた。「この業界の悪いイメージを払拭して、自分たちはこんな仕事をしているとアピールしたい。そこで物流は男の仕事の世界という既成概念を破るためにも、女性の目線から若い感性を活かして広報活動をしてもらいたい」(同)、というのが広報部署の設置目的である。すでにチーム・フロンティアは自分たちのアイディアでSNSなどを活用したPRを展開している。それを見たと言って入社してくるドライバーも出てきたという。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>