運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事
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【第134回】 浜松運送株式会社(静岡県浜松市)
「子ども安全見守り隊」を受嘱し「安全と安心」を実践
今年6月に千葉県八街市で下校途中の小学生の列にトラックが突っ込み、児童2人が死亡、3人が大けがをする悲惨な事故が起きた。事故を起こしたトラックは白ナンバーで、ドライバーはコンビニで買った酒を昼食時に車内で飲んで運転していた。自家用トラックでも5台以上は道交法で安全運転管理者の選任が定められているが、飲酒運転ドライバーを雇用していた会社では安全運転管理者も置いていなかった。このような悲惨な事故を2度と起こさないためには、警察だけではなく社会的に力を合わせて子供たちの安全を見守っていく必要がある。静岡県警浜松東警察署でも「子ども安全見守り隊」の活動を展開しているが、同警察署からの委嘱で浜松運送(本社・浜松市東区、村松正巳社長)も「子ども安全見守り隊」を受嘱。10月28日に委嘱式が行われ、浜松市東区役所の所長や地元の中野町小学校の児童なども参加して今川桂一署長から村松社長に委嘱状が渡された。
村松社長は静岡県トラック協会・交通対策委員会の委員をしているが、同時に浜松運送「基本方針」の5項目の最初に掲げているのが「安全と安心で仕事を進める」である。したがって同社にとって「子どもの安全見守り隊」の受嘱は、会社の基本方針の実践の1つともいえる。「当社では飲酒運転など考えられない。トラックに乗務するドライバーだけでなく、倉庫の業務に従事している社員も毎日、出社時にはアルコール検知器でチェックしている」(村松社長)という。浜松運送は戦後間もない1947年10月に、現在のJR貨物・西浜松駅の近くで設立された。その後、1969年には清水港において海上コンテナの輸送を開始している。同社では、清水港に初めてのコンテナ船が入港する1年前から海コン輸送に参入していた。まだコンテナ船が清水港に入ってくる以前から、東京港や横浜港に入ってきていた清水港向けのコンテナを横持ち輸送していたという。
現在は浜松市内に本社、浜松北営業所、浜松南営業所がある他、掛川営業所(掛川市)、袋井営業所(袋井市)、清水営業所(静岡市清水区)、名古屋連絡所(愛知県一宮市)がある。また、グループ会社としては浜運物流サービス、一般貸切旅客自動車運送事業をしているアクト観光がある。もともと浜松運送は「大型車とトレーラしか持っていなかった」(村松社長)という。一方、1985年に梱包部門を独立させて設立したのが浜運物流サービスだった。だが、2t車や4t車などのルート配送の仕事が入ってくるようになり、浜運物流サービスでも運送事業を行うようになったのである。現在ではグループとして貨物自動車運送事業、自動車利用運送事業、倉庫業(普通倉庫、冷凍冷蔵倉庫)、荷造り梱包作業、輸送荷役機器の売買および賃貸、産業廃棄物収集運搬(静岡県と愛知県)や処理・再生、一般労働者派遣業、損保代理店や太陽光発電などの事業を行っている。
保有車両数はトレーラヘッド24台、トレーラシャーシ90台、大型ウィング車39台、中型ウィング車28台、小型バン車9台である。社員数は浜松運送が80人、浜運物流サービスが95人である。「顧客との契約窓口は浜松運送に1本化しているので、浜松運送の単体だが2021年9月決算期の売上高は26億7500万円」(村松社長)である。同社の取扱い品目は多様だ。海コン輸送は清水港、名古屋港でコンテナ手配と輸送を行っているが、協力会社も含め常時50台以上のヘッドを運行し、デバニング作業もしている。一般貨物では楽器、住宅設備、自動車部品、天然調味料や香辛料、鉱業用薬品、アパレル商品など。また混載輸送では、積合せによる工場間の定期輸送も行っている。さらに名古屋連絡所では、システムキッチンやバスの配送、ベアリングなどの精密機器の輸送もしており、愛三岐(愛知・三重・岐阜3県)の拠点的な役割を果たしている。
このように浜松運送では多様な事業を展開しているが、冒頭で紹介したように「安全と安心」を会社の基本方針の最初に掲げている。そのため各営業所では毎月、安全会議を開催し、また、年に1、2回は外部から講師を招請して全体安全会を開いている。さらに安全マニュアルを作成して全社員が同一の基準で判断を統一し、均質なレベルで安全に取り組めるようにしている。そのような取り組みを継続する中で、約8年前に導入したのが「セルフチェックシート」である。「セルフチェックシート」は、その名の通り従業員1人ひとりが毎月、自分自身で安全に対する各項目の目標を設定し、〇✕で1カ月間の自己採点をするというもの。もちろん全体的な目標もある。自分で目標を立てることで、自主的に安全に取り組む姿勢を育むことが目的だ。このような「安全と安心」への取り組みを社会的にも実践していこうとする試みの1つが、「子ども安全見守り隊」の受嘱である。
<物流ジャーナリスト 森田富士夫>