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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第135回】    株式会社ティスコ運輸(山形県山形市)

社内アカデミーを開校し人材育成、社員食堂は一般にも開放

 地方の事業者は人口減少に伴う市場縮小への対応と、長距離輸送における労働時間短縮といった課題に直面している。この課題を同時に解決しようとしているのがティスコ運輸(本社・山形市、菅原茂秋社長)である。同社は食品、日用雑貨、飲料、アパレル、ホームサービス(高齢者引越や遺品整理など)などを取り扱っている。保有車両数は92台で保管面積は5940㎡、従業員数は正社員165名にパート10名で売上高は22億円である。ティスコ運輸は昨年12月に埼玉県東松山市のウインドクルージングを買収した。この会社は保有台数20台で倉庫も含めた売上は2億円規模。東松山インターチェンジに近く東北自動車道、関越自動車道、圏央道へのアクセスも良い。ティスコ運輸では2024年問題に対応するために、首都圏に運ぶ荷物の中継基地としても活用する。それに併せて岩手、宮城、秋田、山形からの中ロット貨物の積合せ幹線輸送サービスも計画している。

 同社は本社の他に庄内営業所(酒田市)、仙台営業所、岩手営業所(花巻市)があるが、これらの拠点を中ロット荷物の集配の基地として、埼玉県の子会社を中継基地とした新サービスである。地元の市場縮小に対応するため新サービスで営業エリアや事業領域を拡大し、同時に労働時間短縮にも取り組むという戦略だ。一方、同社には中堅や若手社員20人で構成するティスコ2100プロジェクトがある。「2030年までの事業計画は現状を前提にその延長として具体的な目標を設定しているが、2100プロジェクトは2100年にはどのような社会になっているかを想像し、2100年にも必要とされる人や会社になるには、2030年にはどのような人や会社でなければならないかをバックキャスティング的に考える。現状の延長としての2030年と、遠い未来から振り返った2030年のあり方という、両方から考えるのが2100プロジェクト」(菅原社長)である。

 2100プロジェクトには女性活躍プロジェクトなど3つのプロジェクトがあり、2030年には社員の女性比率を30%にする計画で取り組んでいる。その他にも、来年度施行になる女性活躍推進法への対応なども女性が中心になって進めている。このような2100プロジェクトにある3つのプロジェクトの1つがティスコアカデミーだ。同社ではこれまでも従業員教育には力を入れてきた。だが、従来の教育研修制度とティスコアカデミーは何が違うのだろうか。「これまでの教育・研修はスキルアップが目的で、いわば業務遂行力の向上だった。しかし、これからはAIやロボット化などが進んでいく中で、そのような変化に対して人としての対応力のある人材を育成していかなければならない。いわば人間力のアップを目的にしたのがティスコアカデミー」(菅原社長)という。アカデミーの第1期生は14人。立候補制で20歳代から50歳代まで幅広い年齢構成になっている。

 立候補した受講生は各営業所におり、開校日には本社に通って受講する。アカデミーで講義をするのは基本的には社内講師だ。しかし、授業の内容によって必要があれば社外からも講師を招請する。毎月1回の開催で基本的は1年単位とし、段階的にブロンズ、プラチナ、ダイヤモンド、トップofティスコマンという4コースがある。ブロンズの修了者はプラチナコース進級して、4年間で全過程を修了することになる。最終コースのトップofティスコマンを修了した人材は、「社内で新事業を立ち上げたり、グループ会社の社長などを担う」(菅原社長)ようになる。第1回は昨年10月16日に開き、人間力、ビジネスマナーの基本をテーマに授業が行われた。第2回は11月13日でテーマは、実行推進力、コミュニケーション力、第3回は12月11日開催でテーマは、ファシリテーション、自動車の故障探求力(整備知識)だった。整備知識はディーラーに講師を要請した。

 ティスコ運輸でユニークなのは本社の中にある社員食堂だ。食堂は11時30分から14時までの開業で、社員だけではなく、社外の人たちにも開放している。同社の本社の社屋に入っているテナントで働く人たちや、貸会議室もあるので会議に参加した人たち、あるいは近隣の人も利用できるようにしている。社員食堂の名称は「レストラン・カシュカシュ」で、社員同士の交流の場も兼ねて、コロナ以前の2019年6月にオープンした。「カシュカシュ」という名前の由来は、フランス語で「かくれんぼ」とか「かくれ家」という意味のようだ。開設した当初は外部の事業者に食堂の運営を委託していたので、その事業者が命名したのだという。現在は調理師の有資格者2人をティスコの社員として雇用しているので、社内で食堂を運営している。日替わりランチ、麺セット、丼セットなどのメニューが揃っている。なお、同社は2024年にはホールディング化を計画している。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>