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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第137回】    株式会社ボルテックスセイグン(群馬県安中市)

トラック自動運転レベル4相当で実証実験

<無人トラックに有人フォークで積み下ろしする>

 自動車産業は大きな転換期を迎えている。イノベーションの一つはEV化であり、もう一つは自動運転であろう。そのうちの自動運転では、ドライバー不足などに直面しているトラック運送業界でも、生産性向上や輸送サービスの安定的な提供などの面から関心が高まっている。トラックの自動運転の実装化は運送分野におけるDXでもある。そのような中で、自社の物流センター敷地内においてではあるが、技術的にはトラックの自動運転レベル4相当の実証実験を2月19日からスタートしたのがボルテックスセイグン(本社・群馬県安中市、武井宏社長)である。同社では自動運転装置を搭載した4tトラックを2台導入し、群馬大学(次世代モビリティ社会実装研究センター)、日本モビリティ(前橋市)と場内搬送における自動運転トラックによる実証実験を開始した。キックオフには安中市長や群馬県産業支援機構、経産省や国交省の行政関係者などが多数出席した。

 警察庁が現在、道路交通法で認めているのはレベル3までである。レベル3は特定の条件下ではシステムが操作するが、緊急時にはドライバーが対応できる状態であること。レベル4は特定の条件下ならすべてシステムが運転操作をしてもよい。今回の実証実験は公道ではなくボルテックスセイグンの本社物流センター内だが、トラックの自動運転レベル4相当で行う。実証実験に先立ち、自動運転トラックが想定される基本機能を有しているかどうかを群馬大学が事前に検証した。基本性能の検証は、①運用システムの基本走行機能、②トラックの緊急停止機能、③タブレット機能の3点である。基本性能は、速度・加速度および走行軌道を安全に動作する。緊急停止は障害物を検知するセンサーと非常停止ボタン、さらにタブレットによる3つの正しい作動。タブレットによって想定された機能が正しく行えるかどうか(タブレット操作には3番目の緊急停止機能も含まれる)。

<フォーク作業者がタブレットで無人トラックに動作を指定>

 実証実験を行うセンターの敷地内には低床倉庫2棟、一般品倉庫、高床倉庫、冷蔵倉庫2棟、冷蔵自動倉庫、ラック倉庫2棟、特設倉庫その他が建っている。それらの倉庫などでは保管だけでなく、国内や海外に出荷する荷物の梱包作業などを行う倉庫もある。そのため保管倉庫から、国内外への出荷用梱包などを行う棟への場内移送がある。これら同一敷地内の倉庫間の荷物の移動を、完全無人トラックによって自動搬送するというのが今回の実証実験だ。荷物の積込みや荷下しは有人のフォークリフトで行い、フォークの作業者がタブレットでトラックの次の動作を指定する。すると無人トラックであることが分かるように音楽を流しながら、時速約10㎞で指定された場所に荷物を運ぶ。やはり有人のフォークリフトで積込みあるいは荷下しをして、フォークの作業者がタブレットで次に運ぶ場所を指定するというもの。物流センター内の移動距離は一巡で約1㎞になる。

 ボルテックスセイグンではこの実証実験を通して技術的な問題点などを検証する。群馬大学、日本モビリティと協働して改良を進め「完全無人トラックによる場内自動搬送サービス」の実用化を目指す。同社によると、自動搬送車とは一定の領域において自動走行し、荷物など人間以外の物品の搬送を行う機能を持つ車両で、道交法で定められた道路では使用しないものをいう。ただし、限られた場内で使用する自動運転トラックだが、営業ナンバーにしている。この自動運転トラックの実用化を進めると同時に、現在、同時並行でメーカーと技術的改良を進めている自動フォークリフトを組み合わせることで、場内搬送の完全自動化を実現するというのがボルテックスセイグンの計画である。同社は以前から無人エリアにおける自動フォークリフトの導入に取り組み、2020年2月から無人エリアで実用化した。現在、自動フォークリフトによる出入庫最適動線抽出機能を特許出願中だ。

<トラックは自動運転で荷物を輸送>

 この自動フォークリフトは、レーザー誘導システムで位置を把握して自動運転する。精度は高く、誤差の範囲は1㎝以内である。逆に少しの誤差でも自動的に止まってしまうなど実用面では課題もあり、AIによって応用力を高め、屋外や有人エリアでも使用できるようにメーカーと開発を進めている。このように同社では、「自動フォークリフトによる荷役作業と自動運転トラックを一体化した自律型自動搬送システムの実用化を目指している。大きな工場などではこれまでも自動搬送車両があったが、それらは固定された動作範囲の中での自動運搬である。当社では、フリーロケーションにおける場内自動搬送車を実用化し、無人フォークリフトと組み合わせて場内物流の効率化を進めて労働力不足に対応する。また物流現場ではフォークリフトによる事故が多いので、無人フォークで安全性の向上も図りたい」(ボルテックスセイグン・武井宏社長)としている。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>