トラック情報サイト「トラックNEXT」

トラックNEXTは、トラックユーザーとトラック関連メーカーをつなぐトラック情報サイトです

運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

バックナンバー一覧はこちら

【第142回】    協進運輸株式会社(北海道礼文町)

70%が20~30歳代のドライバーで離島の物流を支える

 地方では「運ぶものがない」という声を聞く。第1次産業の比率が高く、地元発の荷物が限られているからだ。日本最北端の駅がある北海道稚内市の西方59Kmにある礼文島は、就業人口(15歳以上)の46.5%が第1次産業の従事者で、そのほとんどが漁業である。したがって地元発の荷物の大部分が水産物だが、逆に島内で消費される食料品、衣料品、日用雑貨その他の生活関連貨物や、建設・建築資材などの建設関連貨物は稚内経由で島内に入ってくる。これら発と着の荷物のバランスを取りながら車両を効率的に稼働することで、離島という制約された諸条件の中で独特な経営をしているのが協進運輸(北海道礼文町、岩川浩志社長)。設立は1980年で、香深漁業協同組合の車両部を切り離すような形でスタートしたが、漁協との資本関係はなく、経営的には独立した会社として運送事業を行うようになった。漁協が収穫した水産物を運んでいるが物流子会社ではない。

 25年前に設立当時のオーナー経営者から経営を引き継いだのが、縁故関係などのない稚内出身の岩川社長である。稚内信用金庫の礼文支店に勤務していた関係から経営を託された。信金にいたので協進運輸の経営内容も知っていた。財務内容が悪いのは、車両の稼働効率に原因があることも分かっていたのである。逆に、どこを改善すれば経営を改善できるかも分かっていたことになる。当時のドライバーは「漁だけではなく出稼ぎもやっていたような人たちで大型免許も持っている人」(岩川社長)などだった。社長就任と同時に、ドライバーの給料を月給制にした。かなり悩んだというが、「月給制にすると同時に、ただ運ぶだけではなく、どこに運ぶ荷物かを考えて積み込んだり、客の要望を聞いたりするなど、ドライバーの意識改革にも取り組んだ」(岩川社長)という。その取り組みの過程で古い体質の人たちは辞め、若い人たちがドライバーとして入社してくるようになった。

 「同時に車両に金をかけた」(岩川社長)。車両を増やして稚内営業所と礼文本社に3台ずつの空車を置き、気象条件で波動が大きい荷物量のバランスを見ながら、積載率など車両の稼働効率を高め、稚内~礼文島(香深)のフェリー運賃の支払いを削減するような経営に切り替えたのである。現在は、宅配便会社の幹線輸送を専門に請けている関連会社の「きょうしん」と合わせ売上高が4億8000万円。車両数は両社で45台、内訳はトレーラヘッド5台、シャーシ10台、大型車8台、4t車8台、2t車14台でほとんどが冷凍車だ。このうち8、9台は礼文島内にある。また、両社の従業員数は24人で、そのうち8人は礼文島にいる。ドライバーは19人で20歳代が5人、30歳代が9人、40から50歳代が5人いる。40歳代や50歳代の人たちは25年前ごろに古い人に代わって入社した人たちで、現在では運行管理を兼ねてトラックに乗務しているような人もいる。

 礼文からは鮮魚や加工品を集荷してフェリーで稚内に運び、稚内営業所でトレーラなどに積み替えて札幌市場に0時までに運ぶ。本州向けは苫小牧港からシャーシだけ無人航送し、大洗港からの輸送は地元の事業者に委託するような仕組みにしている。根室などに運ぶものもあるという。札幌の場合をみると労働時間の関係から市場に近い数カ所から食品や雑貨、建設資材などを積んで稚内に帰る。営業所では礼文島の納品先別に車両に積み替えてフェリーで礼文島に運ぶというのが基本的なパターンだ。ここで悩みは高額なフェリー料金の支払いとダイヤだ。礼文から稚内にフェリーが着くのは19時前後(季節で若干違う)。それからトレーラに積み替えて0時までに札幌市場に届けるのは時間的にタイトである。ドライバーの労働時間には問題がないが、リードタイムにもう少しの余裕が欲しい。いずれにしても様々な荷物の組み合わせで車両の稼働効率の向上を実現している。

 同社は昨年3月、「お取引先様各位」に「日曜日の配達・集荷の中止についてのお知らせ」を「告知」した。働き方改革の一つとして緊急の場合を除いて日曜日の配達を中止して、翌月曜日の配達にするというもの。日曜日は集荷もしない。緊急の配達は別料金がかかる場合もあるとしている。また、香深漁協には、「働き方改革の当社の考えとお願い」という文書を出し「当社と香深漁業協同組合との関係改善がなされなければ、現在進行中の運送業の働き方改革を円滑に推進することができません」として、いくつかの改善検討項目を列記した。その中には日曜日の集荷業務の休業が含まれている。また、「鮮魚類の積込みは、事故の責任の所在を明確にするため」にしないとした。だが、話し合いで日曜日の集荷は昼に1回だけで妥結した。漁業は礼文町の基幹産業で天候など自然に左右される。ナギなら日曜日でも操業しないわけにはいかないためである。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>