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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第143回】    小林運輸株式会社(神奈川県平塚市)

データをRPAで夜間に無人入力、デジタル日報も開始

 中小トラック運送事業者もDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組まなければならない。しかし、ビジネスモデルのイノベーションといった「戦略的DX」は難しい。日常の現場業務で改善が求められている部分から効率化を図る「改善DX」が現実的だ。改善DXは生産性向上のためにも必要で、収益性を高めて労働時間を短縮し、競争力を強化して今後の競争に勝ち残らなくてはいけない。だが、DXはそのための手段の一つに過ぎない。DXを目的化してDXに振り回されず、あくまでツールとしてDXを使いこなすことが重要だ。肝心なのは何をどうすれば、どうなるかである。そのためには現状を把握して分析し、改善すべき業務の優先順位を決め、どのような仕組みにするかを考え、そのためにITなどをどう活用するかを明確にすることが改善DXの出発点である。つまり、主体性が改善DXの出発点になる。また、改善DXを担える人材の育成も必要だ。

 中小事業者として比較的早く改善DXに取り組んだのが小林運輸(本社・神奈川県平塚市、小林誠社長)である。同社は1970年の設立でケミカル製品などの保管、輸配送を中心に事業展開してきた。本社の他に管理部、本社営業所、新町物流センター、茨城営業所、東京営業所があり、さらに8月1日にオープンして10月中旬から本格的に3PL事業をスタートするのが茅ヶ崎物流センターだ。事業内容は一般貨物自動車運送、貨物取扱、倉庫業、産業廃棄物収集運搬業。その他に一般労働者派遣業、荷役業、デイサービス事業などの関連会社がある。従業員数は95人でうち64人がドライバー。保有車両数は67台である。倉庫の保管面積は、危険物倉庫2000㎡、指定可燃物倉庫1500㎡、一般倉庫が3730㎡である。さらに10月からの本格稼働を予定している茅ヶ崎物流センターは延べ床面積が約8910㎡なので、業務がスタートすれば同社では最大の拠点になる。

 運送部門は専属便とフリーに大別している。専属便は配送業務もあるが工場からの拠点間輸送もある。だが、専属便はほとんど前日には仕事内容が分かるので配車が楽だ。一方、フリーは長距離、中距離、近距離などの仕事がある。ドライバーと車両はセットなので、様々な仕事の組み合わせで車両の稼働効率を高めるようにしている。オーダーは前々日や前日に入ってくることもあるが、14時や15時に入ってきたオーダーも含めてトラックに積込み、翌日に輸配送している。このフリーの配車では、「遠方への輸送から配車を組み、大口の荷物を優先して、そこに積み合わせができる荷物を組み合わせることで積載率を向上するように工夫している」(小林社長)という。専属便に対してフリーの配車は複雑で難しく、配車担当者の経験と勘に頼る部分が大きい。また、仕事の組み合わせが複雑なので、配車担当者からドライバーに指示が正しく伝わらないようなこともあったという。

 この配車指示の伝達ミスをなくすことが長年の課題であった。そこで「約10年前に社内でソフトを開発した」(小林社長)のである。ドライバーにタブレットをわたし、自社で開発したエクセルのソフトで配車担当者が画面でタブレットに配車指示などを出すようにした。これで「突然の変更指示なども夜間に指示しておけば翌朝にはタブレットでドライバーに伝わる」(同)。また、「タブレットでは12項目の毎月の安全研修も行う。隔週月曜日に配信し、テストで研修の受講を確認する」(同)。これを同社では「配車かくにん君」と呼んでいる。そして、配達完了情報は大創システムの「配達くん」に女性社員が3人で入力して請求書の発行や、運行実績、車両ごとの収支などのデータにしていた。だが、配車担当者の労働時間短縮と、入力しなおす作業も自動化して効率化を図る必要があった。また、「配車かくにん君」のバージョン・アップも課題になっていたのである。

 そこでグローバルナレッジと協働で導入したのがRPA(ロボティックス・プロセス・オートメーション=業務自動化ロボット)である。「営業所単位でエクセルに入力されたデータは本部に集約され配達くんに入力されるが、この入力作業は夜間にロボットが自動で行う。翌朝に出社した社員は入力結果を確認する。入力結果は〇×で表示され自動入力できなかった×だけを手入力する」(小林社長)。同社では6月からトライアルをはじめ、7月末から本格的にスタートさせた。軌道に乗ってきたら「これまで入力を担当していた人たちには新しい業務に就いてもらう」(同)予定だ。さらに、8月中旬からはデジタル運転日報も導入した。これまでは毎日、ドライバーが手書きで作成していたが、15分から30分かかっていた時間が短縮できる。日報はクラウドでデジタコデータにも連動しており、必要に応じて検索することが可能だ。同社では次に自動配車の導入を計画している。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(写真提供:小林運輸)