運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事
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【第144回】 吉田運送株式会社(茨城県坂東市)
内陸CYでコンテナのマッチング、ストック、デリバリー事業展開
オーシャンネットワークエクスプレスジャパン(以下ONE)は8月1日に茨城県坂東市にインランドコンテナヤード(以下内陸CY)を設置した。敷地面積は2万㎡以上という広大なもの。同所はこれまでもインランドデポ(内陸デポ)としてコンテナのラウンドユース、空コンテナの引き取りや返却などの拠点として活用していた。今度は内陸デポから内陸CYとなり、発着の船荷証券(B/L)の取り扱いが可能になった。この内陸CYのオペレーション業務を担当するのが吉田運送(茨城県坂東市、吉田孝美社長)である。この内陸CYは輸入貨物を着荷主に納品して空になったコンテナと、北関東など近隣の企業から出荷される輸出貨物をマッチングして効率的なラウンドユースを実現するためのハブ機能だけではなく、今後は東北地方などの輸入者への中継基地としての機能も付加し、トレーラに乗務するドライバーの労働時間短縮などにも寄与していく計画だ。
吉田運送の設立は1973年で、地元の酪農家から搾乳された生乳をクーラーステーションから乳業メーカーの工場に運んだり、地元の農家が収穫した野菜を東京・築地市場に運んでいた中小運送事業者だった。「最初は地元の野菜を築地市場に運んでいたが、野菜は季節変動がある。その点、原乳は毎日、搾乳される」(吉田社長)。つまり季節波動が少ないので生乳輸送に力を入れるようになり、近くにある「さかえ酪農業協同組合との取引を増やしていった。酪農組合は大手乳業メーカーに原乳を売っていたが、逆に乳業メーカーのグループの飼料メーカーから酪農組合が飼料を買うことになり、その輸送もするようになった」(同)。このように吉田運送では生乳と飼料の両方の輸送をするようになったのである。さらにその後、海外から乾牧草が日本に入ってくるようになり、海上コンテナ輸送用のトレーラを導入して横浜の本牧に乾牧草を引き取りに行く仕事も始めた。
乾牧草の輸送では空コンテナの回収の問題や、デバンニングの手作業、匂いなどの課題があった。そのような時に「OOCL(香港の海運会社)の営業担当者が乾牧草のコンテナ輸送をしている事業者を探していた。隣接する下妻市に大手家電メーカーの工場があってラウンドユースをやっていたが、その工場が撤退したのでラウンドユースができなくなった」(吉田社長)。そのためOOCLでは乾牧草のコンテナ輸送をしている事業者を探していたのだ。乾牧草の輸入に使われて空になったコンテナで輸出する荷物を運ぶラウンドユースのためである。このような事情から「乾牧草の空のコンテナを輸出用に使えないか、と言われた」(同)のである。そこで調べてみると、輸入に使われて空になったコンテナを輸出用に使うラウンドユース事業はリスクが少ないと考えるようになった。2006年の終わりから2007年の初めごろ、コンテナのデポ契約の話があってラウンドユースの契約をしたのである。
輸入コンテナの多くは港から着荷主に運ばれ、荷物が届けられると空のまま港まで戻される。一方、内陸部の輸出企業は、空コンテナを港まで引き取りに行って輸出する荷物を詰めて港まで運ぶ、といったパターンを繰り返している。これでは空コンテナを戻し、また引き取りに行くというムダな輸送をしていることになる。だが、輸入貨物を降ろした空コンテナに、輸出貨物をマッチングすれば、コンテナを空で輸送するムダを省くことができる。ラウンドユースである。このようなことから吉田運送では海上コンテナ輸送、コンテナの内陸デポとラウンドユースのマッチング事業などを主力にするようになった。現在は一般貨物自動車運送事業、コンテナラウンドユース事業、コンテナデポ運営、コンテナ販売を行っている。従業員数は65人で、そのうちの30人がドライバーだ(うち4人が女性ドライバー)。保有車両数はトレーラのヘッドが30台、シャーシが70台である。
吉田運送は本社(内陸CYに同じ)の他に2017年11月にオープンした佐野インランドポート(佐野IP)がある。いずれも京浜港や茨城港から車で約1.5時間ほどの距離にある。また東北自動車道、北関東自動車道、圏央道などの高速道路へのアクセスも良い。同社はこれらの立地条件を活かして、「これまではマッチングがメインだったが、これからは輸入貨物や輸出貨物をコンテナに入れたままで時間調整する内陸の港として、また、北関東の荷物だけではなく東北発着の輸出入貨物の輸送中継基地としての機能を付加したい。海コン輸送のリレーポイントとしても活用してドライバーの労働時間短縮や、ムダを省いて環境問題などにも貢献できるようにしたい」(吉田社長)と今後の事業展開を考えている。また、同社ではワンルームコンテナ、Barコンテナ、サウナコンテナ、ガレージコンテナなど、コンテナの多様な活用を提案し、各種コンテナの販売もしている。
<物流ジャーナリスト 森田富士夫>