運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事
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【第145回】 高末ホールディングス株式会社(名古屋市熱田区)
中ロット・長尺や異形物の混載「タカスエロット便」を展開
中ロットの荷物は、チャーター便では運賃が割高になる。路線便では荷物が大きいので運賃が割高になるだけではなく取り扱いを敬遠されてしまう。このように中ロットの荷物は一般的に運賃が割高だ。一方、幹線輸送でも荷物の中ロット化が進んでいる。国内経済の縮小に伴ってこの中ロットの荷物は今後ますます増えていくと予想される。このような中で、高末ホールディングス(本社・名古屋市、加藤博己社長)は、中ロット荷物をターゲットにした「タカスエロット便」に力を入れている。タカスエロット便が他の中ロット積合せと異なるのは、①重量は1~3tの荷物が主だが長尺物や異形物も普通に取り扱う、②引き合いがあったら即集荷ではなく荷主の出荷実績や運行状況を分析してメリットが出る方法を提案したうえで一定のトライアル期間を設ける、③専用伝票が不要で荷主の出荷伝票に対応可能、④配送日の要望に対応(一部は納品時間要望も)、などである。
高末HDの創業は1902年で最初は馬車2台による旅客輸送からのスタートだった。荷馬車による貨物輸送を開始したのは10年後の1912年で、その2年後の1924年には早くもトラックによる貨物輸送を開始している。同社がトラック運送以外の分野に事業領域を拡大したのも早かった。1970年には荷主の構内業務請負を開始し、さらに1981年には商品配送センターを開設してシステム的な物流サービスの提供を始めた。1990年には物流コンサルティングも行うようになり、1994年には国際物流にも進出している。2012年にはWCA(グローバルフォワーダー同盟)、2018年にはJIFFA(日本インターナショナルフレイトフォワーダーズ協会)にも加盟した。また、2018年からはホールディングス制に移行した。連結売上高は155億円(2022年2月期)、社員数は665人、保有車両数は318台(その他にリフト156台)である。
セグメント別では運送業務が60%、センター管理・運営が15%、作業が15%、残りはその他である。運送事業収入が60%と多いが一般貨物のチャーター輸送と、物流センターからの配送業務がほぼ半々の構成比である。センター管理・運営と店舗配送を合わせると売り上げの45%になり、一般に「3PL」と称されるタイプの事業展開といえる。そのような中で運送部門が2年ほど前から力を入れているのがタカスエロット便である。現在は関東、東海、関西だが将来は九州や仙台までエリアを拡大する予定だ。引き合いがあったら「守秘義務契約を締結して出荷データを開示してもらい、タカスエロット便でメリットが出るかどうかを分析して、まずこのエリアから始めましょうと一定期間トライアルする」(加藤社長)。このような独自性は、センター運営などで昔から提案営業をしてきた経験を運送事業分野にも活かしているものと思われる。
タカスエロット便を始めたのは10年ぐらい前からである。だが、「2年ぐらい前からパブリシティを含めて特に力を入れ出した」(加藤社長)という。その背景には、全体的な荷物の小口化傾向がある。「営業をしていてチャーターでは高い、路線便も高いうえに運んでもらえないという声を多く聞くようになってきた」(高村徹郎執行役員・事業本部長・営業本部長)からという。集配拠点は東海地区が名古屋と岡崎、関東地区は1カ所がタカスエトランスポート(日本トランスシティとの共同出資会社)、2カ所が協力会社で、合わせて3カ所。関西地区は大阪の協力会社になっている。現在は東名阪に集中しているが、今後、サービスエリアを拡大するには「各地の倉庫会社などとも提携して拠点をつくる必要もある」(高村執行役員)という。協力会社の車両も含めて約800台が同ネットワークに関わっており、集荷は専用車もあれば、チャーター便や配送車両などが集荷する併用車もある。
基本的には前日受注(一部当日)なので、事前に集荷車両の配車ができる。そして、専用車集荷や兼用車集荷などの組み合わせは、「東海地区の場合はエリアごとに集荷量を出して配車している」(高村執行役員)。また、「愛知県内や東海3県ではハブ&スポーク方式を取り入れている」(加藤社長)。集荷した荷物は拠点で方面別に幹線輸送車両に積み替える。混載なので荷物の相性があるため「荷物の組み合わせは配車担当者が行っている」(高村執行役員)。なお、現在のところ年間取扱件数は10万件で、名古屋~東京間では混載幹線便を1日50便ほど運行している。また、長距離輸送では労働時間の問題があるので、東海~関東では静岡県の「藤枝で一部は中継輸送方式を行っている。主たる対象は製造業で、基本的には翌日配送だが配送日要望では配送日指定や一部は時間指定も可能」(加藤社長)。同社では今後、受注業務の効率化や、物流センターとの連携などを進めていく。
<物流ジャーナリスト 森田富士夫>
(写真提供:高末ホールディングス)