運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事
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【第147回】 有限会社Miyamaコーポレーション(福岡県糟屋郡宇美町)
多様な働き方と意思疎通で社員の力を伸ばせる会社を目指す
中小トラック運送事業者でも社員にとって魅力のある社風をつくることはできる。働いている人たちがポテンシャルを発揮することで顧客満足度の向上に努め、自分の生活を楽しんで自己実現できる…そのような経営を目指しているのがMiyamaコーポレーション(本社・福岡県糟屋郡宇美町、降籏美香社長)である。同社は2004年3月に福岡県みやま市(当時はまだ瀬高町)でみやまコーポレーションとして設立された。最初は軽貨物自動車運送事業からのスタートで、2006年2月に一般貨物自動車運送事業の許可を、また同年8月には特別積合せ貨物運送の許可も取得し、現在は倉庫業も営んでいる。創業者は片山善徳会長で降籏社長の実父である。降籏社長は経営を継ぐために教員を辞めてみやまコーポレーションに入社。2018年11月に社長に就任してMiyamaコーポレーションに社名変更した。商号変更は国際的な事業への進出も視野に入れていたからだ。
同社は本社の他に西福岡営業所(福岡市早良区)、久留米営業所(久留米市)、みやま営業所(大牟田市)がある。なお、今年5月の完成予定で現在みやま市内に建設中のセンターが竣工したら、同センターをみやま営業所にして大牟田市にある従来のみやま営業所は大牟田営業所に名称を変更する予定だ。Miyamaコーポレーションの保有台数はトレーラから軽自動車まで103台で社員数は95人。社員の内訳は男性が71人、女性が24人で、女性の比率は23%と高い。部門別の売上比率は一般貨物輸送(特積み含む)が80%、軽貨物や倉庫が10%、ライフサポートやドローン事業その他が10%である。一般貨物運送は雑貨が多く、医薬品、飲料、食品などを輸配送している。雑貨では一般雑貨のBtoB横持ち輸送や店舗配送、食品は店舗配送や学校給食、医薬品では調剤薬局への配送や現在はワクチン配送などもしている。
社長に就任すると最初に全社員にヒアリングをした。その結果、管理職が少ないために相談したくてもなかなか相談できないということが分かった。そして「管理職に相談してもレスポンスが少ないので社員が辞めていく」(降籏社長)。またドライバーが休めば管理職がトラックに乗務してカバーするが、「管理職が3人では休みたいといえる雰囲気ではなかった」(同)。そこで管理職を6人増やして9人にした。新しい管理職の6人は現場との兼務だが、2人ずつ増やしていった。現場では班長などをしていたが役職がなかった人などを正式に管理職にしたのである。「現場が分かっていていろいろなトラックに乗務することができ、ドライバーの人たちからの人望もある人たち」(同)である。その中には「運行管理者の資格を持っていた人もいたが、管理職にしてから運行管理者を取得させた人もいる」(同)。次には人を採用して、兼業から管理職に専念できるようにしていった。
同社ではメンター制度を導入している。「会社を紹介して新人を連れてきた人は1年間メンターをしてもらう。それ以外は部署ごとに管理職以外の人にメンターとして個別に新人の面倒を見てもらう」(降籏社長)。また、家族同伴面接は社員だけではなく配偶者と子供も含めた面接である。社員の中には様々な病気や身体的なハンディを持った人もいる。家族の人も含めた面接で管理職もその人に応じた接し方などを理解していく。ユニークなのは「プラス思考面談」だ。全社員に対する定期的な面談では、事前に管理職からその人の長所や良いところを見つけてもらう。面談では管理職はあなたの良いところをこんなふうに言っていると話す。そして何か困っていることはないか、どうしてほしいかなどを聞く。さらに、会社をもっと良くするにはどうしたら良いかを話してもらう。最後に管理職の良いところを述べてもらって、このような点が良いと言っていたとフィードバックする。
社員の能力アップでは「夢授業」も面白い。ボランティア団体のキャリア教育研究会が行っているもので、社会で楽しく熱心に働いている人たちが学校の先生と協力して小中高校に行って生徒たちと話し合ったりするもの。同社のドライバーも弁護士など多士済々な人たちとともに「ドライバーという職業について自分の経験を15分ぐらい話す。できるだけ自分の子供が通っている学校に行かせるようにしています。参加する生徒からはキラキラした眼差しで見てもらえる。また、高校生ぐらいになると質問も具体的なので、それに答える中でドライバーも変わってくる」(降籏社長)。働き方も多様で、たとえば72歳の女性ドライバーは「高齢の人は早朝に強いので、朝早い出勤で午前10時には帰れるような勤務をしてもらっています」(同)。社員の中には「娘さんが母親を連れてきたり、息子さんが父親を連れてきたりして、当社で一緒に働いている親子が4組います」(同)。
<物流ジャーナリスト 森田富士夫>