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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第148回】    柘運送株式会社(名古屋市港区)

「思いやり運転」の実例を動画で学習しYou Tubeでも配信

 安全運転の研修はネガティブな場面を教材にすることが多い。その発想を180度転換して「思いやり運転」の動画を教材にし、ポジティブな面から模範的な運転の在り方を社内で研修すると同時に、その動画をYou Tubeでも外部に発信している事業者がいる。この事業者は柘運送(本社・名古屋市港区、柘俊光社長)。同社の取り組みは全日本トラック協会の「青年経営者等による先進的な事業取組に対する顕彰」で2022年度の金賞を受賞した。柘運送の創業は1926年で、当時の輸送の主力だった牛馬による港湾運送からスタートした。その後、戦時中の1939年には名古屋市港区の三菱重工業名古屋航空製作所から岐阜県の各務原飛行場までゼロ戦(零式戦闘機)を運んだという。馬で運んでは速すぎて振動などが大きいため、牛でゆっくり運んだといわれている。やがて牛馬の輸送からトラックが陸上輸送手段の主力になり、同社は1964年に法人として設立された。

 現在では本社の他に静岡営業所(静岡県島田市)、岐阜営業所(岐阜県羽島郡岐南町)、岡崎営業所(愛知県岡崎市)、三重営業所(三重県いなべ市)の4営業所、それに浜松工事所(静岡県浜松市)、豊田工事所(愛知県豊田市)の2工事所がある。従業員数は169人で、そのうちの70人がドライバー、同じく70人が電気工事者である。このように同社は、輸送部門と電気工事部門があり、売上比率は輸送が約60%、電気工事が約40%という構成になっている。4営業所は輸送部門、2工事所は電気工事部門の所轄になっている。保有車両数は、輸送部門がポールトレーラなど88台、電気工事部門が高所作業車やダンプなど64台である。輸送部門の88台の中にはポールの積込み荷卸し作業などを自動化した、自社開発の特殊な車両もある。また、輸送部門の保有車両の中には22台の誘導車も含まれている。この誘導車が同社の輸送の特殊性を表しているともいえる。

 安全管理などは輸送と電気工事部門では別に行っている。輸送部門の主な荷物は中部電力を主にしたポールなどで、その他にも建築用壁材のPC板も運んでいる。ポールはいなべ市にあるコンクリート会社の工場から積み込み中部電力管内のポール置き場、一部は東京電力管内のポール置き場にも運んでいる。輸送先は中部電力管内の全域と、東京電力は山梨県、静岡県沼津市、神奈川県の一部などである。同社はポールの製造工場から中電や東電のポール置き場までの一次輸送と、ポール置き場から工事現場までの二次輸送を行っている。二次輸送では古い電柱を引き取って帰る仕事もある。二次輸送は作業現場の道路での荷役作業になるので、道路上での荷役作業を安全に行えるようにするため自動でポールを積み込んだり卸したりできる車両を自社開発した。電柱に人が触れなくても自動荷役できるようになっている。道路上での荷役の安全性と利便性を考えたものである。

 輸送部門では8グループの小集団活動をベースに安全衛生委員会で全社(輸送部門)的な安全管理や研修を行っている。この研修にドライブレコーダーで収録した「思いやり運転」の動画を活用している。「2017年からヒヤリハットの動画を集めるようにしたが、ヒヤリハットはあまり集まらなかった。そこでネガティブな材料ではなく2020年から『思いやり運転』というポジティブな動画にすることにした」(柘社長)。目的は、①「思いやり運転」を行うことで危険発見の見落としなどを予防して事故を低減する(安全対策と事故費用削減による収益性向上)、②「思いやり運転」の動画を収集して安全運転で荷物を運ぶ姿を配信して同業他社との差別化を図る(安全の見える化によって取引先などに安心を伝える)、③「思いやり運転」の取り組みを発信することで安全で快適な交通社会実現の一助になる(交通社会への貢献)などである。

 具体的には①輸送安全マネジメントの目標設定→②ドライブレコーダーの動画収集→ ③動画編集(ナレーションに教育的な内容を一部盛り込んで3分程度に編集、たとえば道交法38条=横断歩道における歩行者優先など)→④安全会議で視聴(乗務員を褒めることで安全意識を向上、視聴することで安全運転の見本として事故防止につなげる)→⑤自社のホームページに掲載→⑥You Tube(自社の公式チャネル)で動画を発信、などである。効果では2018年度の事故件数17件が、2021年度では3件に激減。事故処理などにかかった直接費用も2021年度は20万円まで減少した。You Tubeの反応では、ある講師からYou Tubeの動画を講習に教材として使わせてほしいという要請や、ある運送事業者からも安全教育に動画を使いたいという連絡があった。さらに「第四管区海上保安本部(名古屋港)から要請があり、私が事例を発表してきました」(柘社長)という。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>