UD、大型トラックでのレベル4自動運転デモ初公開
2018年12月14日(金)
UDトラックス本社テストコースで公開されたレベル4の自動運転のデモの様子。安全上の理由で乗車しているドライバーは運転に一切関与していない。
自動化とコネクティビティ、スマートロジスティクスに貢献
〜港湾内、工場構内、物流施設、建設現場などの限定領域において効率、安全性、生産性を向上
UDトラックス株式会社(本社:埼玉県上尾市 代表取締役社長:酒巻孝光)は12月12日、同社本社敷地内UDエクスペリエンスセンターで、大型トラックによるレベル4の自動運転デモンストレーションを、ビジネスパートナーおよび報道関係者に初公開した。本デモは、5段階の自動運転レベルにおけるレベル4(特定条件下における完全自動運転)走行で、港湾内、工場構内、物流施設、建設現場などの限定領域を想定して実施された。こうした領域では、大型トラックが自動運転走行することで、効率、安全性、生産性を高めることが期待されている。
デモンストレーションでは、GPS(全地球測位システム)やレーダー、LiDAR(ライダー)、車載カメラ・ソフトウェアなどの自動運転技術を駆使し、大型自動運転車両が発進、停止、Uターン、旋回、バック走行などを高精度で行った。大型トラックの運転には、様々な走行環境の中で、重い荷物を積んだ状態で安定走行するために、より精密な車速制御やステアリング技術などの高度な車両制御が必要とされる。同社は大型トラック「クオン」に搭載されている電子制御式トランスミッション「エスコット・シックス(ESCOT−?)」やグループで実証されているステアリングシステムを駆使し、安定走行を可能にする。
また同社は現在、経済産業省および国土交通省が実施している高速道路でのトラック隊列走行プロジェクトに参画しており、車車間通信や車線維持支援システムなどの必要な技術において、安全性や精度をさらに高める開発を実施している。
レベル4自動運転の実現は、ドライバーがすべての運転要素を車両に任せられる完全自動運転(レベル5)に向けた重要なステップである。同社はボルボ・グループとして、グループが世界で実施している実証実験から得られた豊富なノウハウを活用し、ユーザーのニーズに応じて、自動化技術の開発を行っていく。また物流業界はもちろん、様々な企業との実証運行や共同開発を通じノウハウを蓄積していく予定。
同社開発部門統括責任者ダグラス・ナカノは、今回の大型トラックによるレベル4のライブデモ実施に際し、「この度、日本で初めて一般公開できたことは、2020年の自動運転トラック実用化に向けた大きな一歩になります。昨年発売した大型トラック『クオン』は高度な車両制御システムを採用しており、高精度な自動化を実現するための技術的な土台となっています。UDトラックスはこの新型車両をベースに自動運転精度をさらに高め、私たちのビジョンである時世が求める商品・サービスをお客様に提供していきます。本日の公開デモがビジネスパートナーとの話し合いの場につながり、物流業界やサプライチェーン、社会に貢献していきたいと思います」と述べた。
■次世代技術ロードマップ
同社は今年4月、次世代技術ロードマップ「Fujin & Raijin (風神雷神)――ビジョン2030」を発表した。自動化の取り組みをロードマップの柱の1つとして位置づけ、モノを動かす力を象徴する「風神」をプロジェクト名に開発を行っている。ロードマップは、物流業界が世界中で直面している排出ガス、電子商取引の増大、ドライバー不足などの課題の解決に貢献することを目指している。
■世界でつながるトラック
自動運転に加えもう1つの柱である電動化を推進するのは、デジタル化をベースとしたコネクティビティ技術。同社は2006年から開始した同技術により、国内および一部海外で走行する約5万台のUD車両がつながっており、2025年までには15万台にまで増やすことを目指している。ユーザーの運行状況から収集したデータを解析することで、ユーザーの車両の稼働率向上、運行管理、品質や技術革新に役立てていく。
同社はボルボ・グループ全体で80万台にもおよぶつながる車両を通じて得られたデータを活用し、自動運転技術やコネクティビティ技術の向上を通じて、物流の効率化に貢献していく。同社IT部門統括責任者サティッシュ・ラジュクマールは、「世界中でつながるボルボ・グループの車両から得られるデータは私たちの財産です。これを活用し、お客様へのサービス向上、スマートロジスティクス(物流の効率化)、そして社会の発展に貢献していきたいと思います」と述べた。
同社は現在、大型の自動運転トラックと電動トラックのプロトタイプの開発を進めており、2019年の東京モーターショーへ向けてビジネスパートナーと実証運行を実施することを目指している。また2020年までには特定用途での実用化を行い、2030年までに完全自動運転トラックと大型フル電動トラックの量産化を目指す。