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全ト協「トラック事業における総合安全プラン2009」の中間見直し

2015年3月16日(月)


今後10年間の営業用トラックの事故削減の数値目標(クリックすると拡大表示します)
 国土交通省では、平成26年11月の「事業用自動車総合的安全プラン2009フォローアップ会議」を踏まえ、「事業用自動車総合安全プラン2009」の中間見直しを行い、11月27日に報道発表を行った。
これを受け、公益社団法人全日本トラック協会では「トラック事業における総合安全プラン2009」の中間見直しについて「第159回理事会」(平成27年3月12日開催)において審議した結果、総合安全プラン2009の最終目標達成に向け、トラック運送業界が一丸となって取り組むこととなった。 今後は各都道府県トラック協会と連携しつつ、交通事故防止対策の一層の推進を図る予定。


<見直し内容>(以下、原文より抜粋)

1.はじめに

 公共の道路を使用して業務を行うトラック運送業界にとって、交通安全、事故防止への取り組みは社会との共生を図るうえで最重要課題であり、そのため様々な交通安全対策を推進している。

 2006年3月には国の「第8次交通安全基本計画」が策定され、2010年までに交通事故死者数を5,500人以下、交通事故死傷者数を100万人以下にすることが目標として掲げられた。しかし、交通事故死者数は2008年で5,155 人となり、2年前倒しでこの目標が達成されたことにより、2009年1月5日、今後105年間を目途に2008年の交通事故死者数から半減させ、2,500人以下とするという新たな政府目標が掲げられることとなった。

 全ト協では、2006年度に自主的な交通安全対策を実施するため、2010年度を目途とした数値目標を設定し、その実現に向けた具体的な対策(行動指針)を取りまとめた「交通安全対策中期計画」を策定し、交通安全対策を推進しており、既に数値目標は達成している状況にある。

 このような状況のもと、国土交通省では2009年3月に「事業用自動車総合安全プラン2009」を策定し、事業用自動車の交通事故による死者数を10年間で半減(2008年の517人を10年後に250人、中間年である5年後には380 人)、人身事故件数を半減(2008年の56,305件を10年後に3万件、中間年である5年後には4万3千件)させ ることなどが目標として掲げられた。

 トラック運送業界としても、国土交通省の「事業用自動車総合安全プラン2009」の数値目標や取り組み計画を踏まえ、また、平成26年11月の同プランの見直しを踏まえつつ、今後の交通安全対策を推進するにあたり、10 年後(2018年)を目途とした「トラック事業における総合安全プラン2009」の見直しを行うこととした。

 トラック運送事業者や各都道府県トラック協会が各地域の事情に応じて、自主的かつ具体的に目標の設定と対策計画を策定し、「事業用自動車総合安全プラン2009」(平成26年11月の同プランの見直し内容を含む。)を実施することを期待するものであり、かつ荷主など社会全体の理解と協力も期待するものである。

 なお、本プランは、PDCAサイクルに沿って、定期的・継続的に進捗状況をチェック し、適宜、必要な見直しや対策を講じることとする。


2.目標(Plan)

(1)基本目標
国による計画を踏まえ、営業用トラックが原因となる交通事故死者数、交通事故件数を減少させる。また、有責死亡事故の撲滅を図る。


(2)数値目標
国による計画を踏まえ、今後10年間の営業用トラックの事故削減目標を以下のとおり設定する。(右上画像参照)

1. 2018年までに、交通事故死者数を220人以下にする。
2. 2018年までに、人身事故件数を15,000件以下にする。
3. 飲酒運転の根絶・危険ドラッグ等薬物使用による運行の絶無

また、上記の目標を達成するため、事業用トラックを第1当事者とする死亡事故件数を、車両台数1万台当たり「2.0件以下」とし、各都道府県(車籍別)の共有目標とする。これにより、死亡事故率の低い都道府県トラック協会の対策を水平展開し、 更なる事故防止対策の推進を図る。


3.目標達成のために講ずべき対策(Do)

(1)安全体質の確立

公共の道路を使用して業務を行うトラック運送業界にとって、交通安全、事故防止への取り組みは社会との共生を図る上で最重要課題である。
交通事故防止のためには、各トラック運送事業者における日々の自主的な努力の積み重ねが最も重要であるため、すべてのトラック運送事業者において安全体質が確立されることを目指し、交通安全対策を推進する。

【重点対策】

1. 全ト協及び都道府県トラック協会の総会、事業者大会等における交通安全セミナー及び交通安全決議の実施により、交通安全に対する事業者の意識の向上の定着を図る。

2. 運輸安全マネジメントについて、一層の定着と取組の深度化、高度化を図るため、 最低車両台数(現在は 300両)の範囲拡大を検討するとともに、官民一体で取り組む普及・啓発活動を推進する。

3. 運行管理者が運転者に対して実効性のある指導・監督が行えるよう、国土交通省が 平成24年4月に作成した「指導・監督マニュアル」及び全ト協が作成した「「運行管理業務と安全」マニュアル」の活用を周知する。

4. 国土交通省が平成26年4月に改訂した「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」及び全ト協が作成した「トラック運送事業者のための「健康起因事故防止マ ニュアル」」を活用し、健康状態に起因する事故防止対策を推進する。

5. 国土交通省のメールマガジン「事業用自動車安全通信」について、その活用方法をトラック協会の広報誌,HPにより周知徹底する。

6. 指定安全運転研修施設に運転者等を派遣して安全教育訓練を実施する会員事業者に対し助成するとともに、助成制度の周知に努める。


(2)コンプライアンスの徹底

企業活動におけるコンプライアンスを求める機運が社会全体に広がるなかで、トラック運送業界においては、交通事故や法令違反は、事業継続の観点のみならず、国民の安全・安心に直接支障を及ぼすことになりかねないことから、特に高いコンプライアンスの徹底が求められている。トラック運送業界がコンプライアンスを徹底するためには、荷主等、発注者サイドの理解や協力のもと、公正な事業環境の醸成に努めることが重要である。

【重点対策】

1. 集荷時間や配達時間などの過度な運送時間等安全運行に係る関係法規に抵触するような運送条件を設けないよう荷主等に要望するとともに、安全運行パートナーシップ・ガイドラインについて、荷主、元請事業者と協力して取り組む。

2. 貨物自動車運送事業安全性評価事業(Gマーク)について、関係行政機関、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関と連携し、円滑な推進を図る。

3. 全日本トラック協会HP等への危険行為、迷惑行為等の苦情へのフォローアップを行う。

4. スピードリミッターの改造等不正改造排除活動を実施する。


(3)飲酒運転の根絶・危険ドラッグ等薬物使用による運行の絶無

顧客の財産を預かる運送事業者にとって、飲酒運転、危険ドラッグ等薬物使用は言語道断の恥ずべき行為である。飲酒運転の根絶、危険ドラッグ等薬物使用による運行 の絶無を実現するため、運転者ひとり1人が運送のプロとしての自覚と誇りをもち、厳しい目で自らを律する必要があることは言うまでもないが、加えて、各事業者においても、「飲酒運転の根絶」、「危険ドラッグ等薬物使用の絶無」の方針のもと、運行管理を中心に、飲酒運転、危険ドラッグ等薬物使用につながる意識や行動の芽を確実に摘み取る体制の構築に努める。

【重点対策】

1. 点呼時におけるアルコールチェッカーの使用の義務付けを徹底する。また、改訂された「飲酒運転防止対策マニュアル」の周知徹底を図る。

2. アルコール・インターロック装置の普及促進を図るため、導入助成を行う。

3. 危険ドラッグ等薬物の使用禁止の徹底を図るため、啓発活動を推進する。


(4)IT・新技術の活用

交通事故防止に効果がある EMSやASV関連機器の普及に努める。例えば、ドライブレコーダ、デジタル式運行記録計等の EMS(エコドライブ・マネジメント・システム)関連機器については、安全や事故防止の観点にとどまらず、業務の効率化、燃費向上、事故処理費用の削減等を通じて経済的なメリットももたらすため、これらの普及促進に努める。

【重点対策】

1. ドライブレコーダやデジタル式運行記録計など EMS関連機器の普及促進を図る。

2. 「ドライブレコーダ活用セミナー」を開催するほか、ドライブレコーダの映像を活用した「WEB版ヒヤリハット集」の充実を図り、危険予知訓練(KYT)の取組みを促進する。

3. 事故の類型は追突事故が全体の半数近くを占めているため、「トラック追突事故防止マニュアル活用セミナー」を開催するほか、後方視野確認支援装置の普及促進のため、装置の導入に対する助成事業を実施する。

4. 事業者や運転者向けの「エコドライブ推進マニュアル」を活用し、経営トップや運転者の意識改革を図るとともに、交通事故防止につながるエコドライブの推進に努める。


(5)運行の現場を含めた関係者一体となった行動、構造的な課題への対処

本プランの取組開始後5年間を経て見えてきた各モード毎の多発傾向にある特徴的な事故にターゲットを絞り、運転者・運行管理者等運行の現場関係者とも一丸となって事故防止に取り組むとともに、運転年数の少ない若年運転者を効果的・効率的に育成・確保するための方策を講じる。


【重点対策】
1. これまで一年単位で集計されていた事故情報を四半期毎に集計するとともに、車籍別、車両区分別等詳細に交通事故実態を分析・把握し、有効な事故防止対策の樹立につなげる。

2. 事故の類型は追突事故が全体の半数近くを占めているため、「トラック追突事故防 止マニュアル活用セミナー」を開催するほか、交通事故による致死率が高い人対車両の衝突に着目した「交差点における事故防止セミナー」等の開催を通じ、交通事故防止の意識の高揚を図る。

3. 事業者や運転者向けの安全運転教育用教材資料を作成し、社内での安全運転教育の促進及び安全意識の向上を図る。


(6)道路交通環境の改善

事故削減目標を達成するためには、トラック運送事業自体の安全性の向上のほか、トラック運送事業をとりまく道路交通環境の改善も重要な要素である。関係行政機関との連携を図るとともに、よりよい道路交通環境の実現に貢献する。

【重点対策】

1. トラックドライバーが計画通り運行し、安心して休憩を確保できるよう、高速道路のSA・PA等における駐車スペースの整備・拡充について、関係機関に対して要望を行う。

2. 事業者から高速道路、主要幹線道路における事故多発地点や道路危険箇所等の情報を収集し、事故多発地点マップを作成するとともに、道路管理運営会社や道路管理当局に情報提供し、改善を要望する。


4.本プランのフォローアップ(Check,Act)

本見直しプランに掲げた数値目標等を確実に達成するためには、PDCAサイクルに沿って、定期的・継続的に進捗状況をチェックし、適宜、必要な見直しや対策を講ずることとする。

その他の詳細は、全ト協ホームページへ。